東京農業大学教授の増田先生と一緒にお届けする、ワンコともっと良い関係を築くためのヒント。
ワンコから見えるモノゴト、ワンコの考え方、感じ方など、
ワンコたちに見えている世界を私たちにも見せてくれる増田先生シリーズ「ワンコno世界」第6回。
前回に続き、「これについて教えて欲しい!」という声の多かった
ワンコの不思議行動についてご紹介します!
Advisor
増田 宏司 教授
東京農業大学 農学部 動物科学科 教授。東京大学大学院を修了後、同大学院で学術研究支援員を務め、2006年から東京農業大学で研究と学生への指導を行う。研究だけでなく、飼い主向けのカウンセリングやワンコのしつけに使えるグッズの開発など、ワンコと飼い主が幸せに暮らせる社会を築くため、幅広く取り組んでいる。
WHY?
うちの子の犬見知りがすごいんです。
ブルブルしたり、吠えたり。。。なぜでしょう?
生後1〜3ヶ月くらいの社会化期の過ごし方に原因があるかもしれません。
犬同士が出会ったときは、相手が自分にとって脅威でないかを確認し合うものですが、中にはこのやり取りさえも嫌がる犬がいます。
生後ある時期にさしかかると、子犬は親犬からの指導やきょうだいとのふれあい、人間社会のあれこれの経験を通して、ものを徐々に覚え、慣れていきます。いわゆる社会化期と呼ばれる、生後1~3か月くらいの時期です。
いろんなものを経験するこの時期をうまく過ごせなかった場合、成長後に臆病になったり過敏になったりするかもしれません。
また、社会化期とは関係なく、他の犬が苦手になるような経験をして現在に至っていることも考えられます。程度にもよりますが、他の犬との接触をうまくコントロールして、犬見知りを改善させることが可能ですので、専門家に相談されるのも一つの手でしょう。
また、しっぽが短い、被毛で顔が見えにくいなどの理由で、他の犬とのスキンシップがうまくいかない傾向にある犬種もいるようです。
WHY?
競争でもしているかのような早食いをします。
なぜこんなにガツガツ食べるのでしょうか?
ワンコの早食い、実は犬のルーツにあり!
犬には早食いの習性があります。理由は、そのルーツにあるようです。もともと狩りをして生きていた動物であった反面、その狩りがたまにしか成功しなかったため(獲物も必死に逃げますから)、食べられるときに、出来るだけたくさん食べておく習性として現在に至っているのでしょう。
また、狩りは仲間と協力して行っていたため、その効率は良かったものの、少ない分け前を周りの犬に取られてしまわないように、急いで食べる必要があったことも理由の一つとして考えられます。
つまり、「取られたくないから」という理由で、犬は早食いをするようです。現代においては、食べ物を取られてしまうようなことはあまり起きないかもしれませんが、おやつを隠す行動などもたまに見られますので、やはり、取られたくないのでしょう。
WHY?
挨拶なのはわかるんですが、なぜワンコはお尻の匂いを嗅ぐんですか?他の場所ではダメなんですか?
肛門嚢付近の組織の中に貯蔵されている分泌液の量や成分が個体によってかなり違いがあるんです。
犬同士の挨拶は、まず鼻先や頭の匂いを嗅ぎ合い、次に体やお尻と、匂いの強い部位を頭からしっぽに向かって順にチェックしていくことが多いようです。
なぜお尻の匂いを嗅ぐかですが、肛門の近くには肛門嚢(こうもんのう)という組織があり、その中に貯蔵されている分泌液の量や成分は個体によってかなり違いがあります。すなわちこの違いを嗅ぎ分けることで、犬は他の犬を識別していると考えられています。
WHY?
自分の尻尾を追いかけて猛スピードでぐるぐる
回ります。どうしてでしょうか?
尻尾ぐるぐるには「反応しない」が正解です。
しっぽを追いかけてぐるぐる回るのには、下記のような理由と原因が考えられます。
- たまたま暇な時に、自分のしっぽが気になって、追いかけてみたら捕まえられないことに気づいて、そのうち夢中になってしまう。
- 構ってもらえない、欲しいものが手に入らないなどのジレンマを感じた時に、フラストレーションがたまってぐるぐる回ってしまう。
- しっぽを追いかけている時に、飼い主さんが「すごーい!」などの大騒ぎをしてしまって、「こうすればご主人に構ってもらえる」と学習し、習慣になってしまった。
こうした行動をやめさせるには、ぐるぐる回ることに反応しないこと、犬との関係を再構築することが重要ですが、中には、飼い主さんの制止も聞き入れず、いつまでも黙々と続けている、いわゆる「回らずにはいられない状態」になっていることもあります。その時は病気の可能性もありますから、診察を受けることも視野に入れたほうが良いでしょう。
Message for dog owners 飼い主さんへのメッセージ
飼い主さんも、「愛犬を幸せにする実力」を身につけて成長しています。
犬には犬の表現方法があることは、前回述べました。でも実は、飼い主さんの生活スタイルや犬への接し方によって、時間をかけながら個々に変化・変容していく犬の行動もあります。
本稿で紹介した、犬見知りやぐるぐる回ることなどは、その一例である可能性が高いものです。かつて私が犬の飼い主であった時は、愛犬クッキーが見せていたいくつかの行動に対して「この子がこんな行動をするのは、私の生活や接し方のどの部分が影響したのか?」と考えるようにしていました。
そうやって、生活の中で愛犬の行動に影響したと考えられる、自分の習慣や接し方を特定し、苦労を重ねながら改善を試みてきたことは、愛犬クッキーが亡くなって数年が経過した今でも、やさしい思い出として私を支えてくれています。
飼い主という種類の人間は、きっとそうやって飼い主としての成長を遂げてゆき、「犬を飼う」という言葉の定義を「愛犬を幸せにする実力を身に付けること」に変化させてゆくのでしょう。
飼い主さん、あなたの愛犬は、まさに生涯をかけて、幸せな飼い主のあり方をあなたに教えてくれています。どうか、愛犬と一緒に、幸せになってください。