はじめに
てぃんちゃん&かーらちゃんとの出会いのきっかけは、2022年新年の「うちの子作品企画」でした。ワンコnowaで「愛犬の好きなところを教えてください！」という企画を行ったのですが、そちらに当選したのが、てぃんちゃん＆かーらちゃんだったのです。
当選連絡の際、プレゼントになっていた「うちの子movie」を作るために、追加で好きなところやエピソードをお伺いしたところ、数日後、ご家族からプリントするとA4で6枚にも及ぶ、二匹のエピソードが届きました。
その内容を拝見し、是非、二匹のストーリーをみなさんにもお伝えしたいと思い、今回の記事にさせていただくことにしました。
野犬？野良犬？その違いとは
そもそも、野犬とは何か、野良犬と野犬の違いはなんなのかと、疑問に思われる方もいらっしゃると思いますので、はじめに、野犬について少しだけ補足を。
野犬とは？
人と暮らした経験がなく、野山に生息する野生化したワンコたち。
野良犬とは？
飼い主がいないワンコ。家庭で飼われた経験があり、飼育放棄などで捨てられたり、逃げ出して迷子になるなどして、飼い主がいなくなったワンコたち。
最近では耳にすることもあまりなくなりましたが、日本の各地の自然豊かな地域にはまだまだ野犬がおり、各自治体ごとに対策に取り組んでいます。そんな野犬は、人に飼育された経験を持たないため、警戒心や攻撃性の強さ、健康上の問題などがあり、譲渡がなかなか難しいのが課題と言われています。
てぃんちゃん&かーらちゃんとの出会い
沖縄に住む、おずさん（ニックネーム）のご家族がてぃんちゃん＆かーらちゃんと出会ったのは、先代犬の柚ちゃんが亡くなって三回忌が過ぎた頃。柚ちゃんも譲渡犬だったこともあり、自然な流れで保護犬や譲渡犬等を探し始めました。先代犬の柚ちゃんがワンコが苦手で遊び相手がいなかったため、「次は多頭飼いがいいね。」と家族で話されていたそうです。
なので、沖縄県の愛護センターに野犬の姉妹がいることを知って、すぐに会いに行ったのだとか。初めて会った二匹は、決してべったりしている訳ではありませんでしたが、お互いに助け合う様な姿が見てとれたので、二匹一緒に迎え入れる事をすぐに決意。
愛護センターのルールは1家庭に1頭でしたが、センターに来ているボランティアさんの助けもあり、離されるとキューキュー鳴く姉妹を例外的に一緒に迎え入れる事が出来ました。
姉妹は、保護されてからセンターに行くまでにも何度か移動しているのか車での移動は慣れたもので、センターから家に向かう車中でもケージの中でとても落ち着いていて、おずさんのおうちに来てからも、1ヶ月くらいはまだ仮住まいだと思っている様子だったそうです。
そんな姉妹に、おずさんご家族は、「天の川」を意味する沖縄方言の【てぃんがーら】から、天(てぃん)と河(かーら)で、二対一体の素敵な名前をつけたのでした。実は名前の候補の中から姉妹を実際に呼んでみて、一番反応の良かった名前がこれだったそうです。
姉妹の過去を、少しずつ受け止めながら
てぃんちゃん&かーらちゃんを迎えてから、「野犬」であった過去を感じることが何度もあったそうです。
ワクチンや狂犬病の接種を終え、散歩に行けるようになった頃のこと。夜の散歩で、てぃんちゃんが木の根っこの隙間にいたネズミを捕まえて放り投げ、また捕まえては放り投げるのを繰り返したのを見て、おずさんご家族は衝撃を受けました。散歩では基本的に小動物を探したがるそうですが、今では「終わり」と「バイバイ」のコマンドでやめる事ができる様になったんだそうです。
「食」についても、海に行くと打ち上げられた海藻を食べたり、“おやつ見知り”（おずさんのおうちではそう呼んでいる）をするそうです。かーらちゃんは神経質なので、初めての食べ物はちょっとずつ試してからでないと口にせず、てぃんちゃんが美味しそうに食べたの見てから食べるのです。やはり野生的な部分が、最初から人と暮らしているワンコより強いのかもしれません。
また、姉妹が「怖がること」から過去を感じることも。
ドライブすると必ず作業着を着た工事作業員にワンワン吠えたり、決まって白髪の男性にも威嚇吠え。また人の足が怖いようで、足で触られる事も大嫌いだそうです。もしかしたら、野犬時代に出会った人との嫌な思い出や、保護された時のトラウマがあるのかもしれません。
ゆっくりじっくり時間をかけて、少しずつ家族に
二匹が家族として馴染んできたと感じるようになったのは3年を過ぎた頃。「ここが自分の家で一緒に暮らす家族なんだと思うのに、長い時間がかかったんだと思います。」とおずさん。
天真爛漫で好き好き！と飛びついてくるタイプのてぃんちゃんも、最初は部屋と部屋を行き来する際に尻尾が下がっていたそうですが、3年を過ぎた頃、気づくと部屋移動時にも尻尾が普通に立ち上がっるように。
そんな変化は、元々警戒心が強く、頭を触られたり後ろから近づかれるのが怖くて「ワン！」と威嚇してしまうかーらちゃんも。かーらちゃんは、お気に入りのおずさんのベットの上にいる時は、家族が部屋に入るだけでも、ウーっと威嚇してしまいます。それが3年過ぎた頃から、おずさんには威嚇をほとんどしなくなったのだとか。「私以外の家族が入ってくるとワンしちゃうんですけど、その後お腹を見せて悪気はないアピールをします（笑）。それに、かーらは何もなければ、お部屋でひとりになりたいタイプだったのですが、4年経った今では家族のそばで休んでる時間が多くなってきました。」
「凄く時間はかかってますが、これからもっと仲を深めたいと思います。ちょっとの変化に気が付くのが楽しみなんです。」そんなおずさんの言葉に、こんな家族がいてくれたから、野犬だった姉妹も少しずつ心を開いて家族になっていけたんだなと感じました。
深い愛を感じた「二人の好きなとこ」コメント
もちろん全部！！なんですが、強いて一つあげるなら、お外での生活経験のある双子が、私たちを家族と思い、我が家のルールを守ってくれるところですかね。
「好きなとこを教えてください！」のお願いに、おずさんがくれたコメントです。このコメントの背景も今回お伺いすることができました。
「我が家に来た頃には小さいけどお庭の柵を乗り越え脱走した事もある身体能力の高いふたりです。今のふたりなら飛び越えられるくらいですが、今は決してそんな事はしません。
駐車場は門や柵がなく一歩踏み出すと敷地外なのでふたりが見回りしたいと要求した時にノーリードで一緒に出るのですが、ここから出ちゃダメと教えたラインから外を覗きますが、出て行くことはありません。猫には目がないので外を歩く猫を見つけると興奮してしまいますが、そのまま外に追いかけて行くことはなく、家に入り階段を駆け上がってよく見える2階のベランダからずっと猫に吠えています。これには毎回凄いなぁと感心します。
そして、今ふたりのプレイルームになっている和室は、敷物を敷いている時だけ入って良いルールなんです。盆と正月には敷物が片付けられるのでその時は隣のリビングから集まった親族を監視しています。
他にもテーブルは舐めたらダメとか細かいルールがいっぱいあると思うけど、ふたりとも賢いので快適に生活できています。」
てぃんちゃん&かーらちゃんとの間に素敵な信頼関係を築かれているおずさん一家。家族の一員として「ルール」をちゃんと守っている、てぃんちゃん&かーらちゃんが、ますます愛おしく思えました。
そしてもう一つ、おずさんが語ってくれた二人の好きなところが、“嫌だけどやらなければならない事はちゃんとやる所”。
「ふたりともお風呂は嫌なんですが、特にかーらは家族がお風呂に入る為にボイラーのスイッチを入れただけでお部屋へ逃げちゃうくらいなんです。でも散歩帰りに『お風呂場に行って！』と言うとちゃんとお風呂場で待ってます。散歩の後は足を洗うかお風呂に入るかがルーティーンです。
てぃんは皮膚病があって現在改善途中なんですが、もう1年くらい肌ケアで毎日2回、体全体の拭き取り、患部の洗浄、保湿（又は軟膏）をしています。長い時は1回1時間くらいかかってしまったので、冷たいしじっとしていないといけない事が嫌なのですが、『キレイキレイしよう』って言うとちゃんと定位置に行ってくれます。やっぱり嫌なので手を隠したりちょっとした抵抗があるのがまた可愛いです。最近はしないと眠りに行けないと思ってるのか、夜遅くなると自らキレイキレイしてとアピールしてくる時もあります。」
きっと言葉はわからなくとも、ふたりを大切に思う「家族の想い」はしっかりと届いていているのだと感じました。
最後に、おずさんからいただいたメッセージの中で、とても印象的だった言葉をご紹介します。
ふたりとも見た目も可愛いし、さわり心地も抜群に良いし、頭も良いし、性格も可愛い、今では我が家を自分の帰る場所だと思っている所も愛おしいです。
急に人間の世界に連れてこられて、人間の愛情表現を理解してくれて、どう納得しているのかわからないけど我が家のルールを守ってくれる素晴らしいふたりです。
人とワンコ。種族も、育った環境もちがうもの同士が家族になろうとする時、やはり大切なことはお互いに相手の気持ちを尊重して理解しようとする姿勢なのだと、改めて教わった気がします。
今回は、沖縄から素敵な元野犬姉妹とご家族のストーリーをお届けしました。
てぃんちゃん＆かーらちゃん、ありがとうございました！
