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“正しい姿勢”が負担の少ない老後に導くと
たくさんのワンコと飼い主さんに知ってほしい

伊藤さんとnowa

nowaチームの平端弘美さんが「会ってほしい人がいる」と紹介してくれたのが、伊藤さんでした。
平端さんは、伊藤さんから老犬介護やワンコの整体を教わっており、恩師のような存在とのこと。
実際にお会いした瞬間に、フレンドリーかつ親しみやすい人柄で、nowaスタッフを魅了してくれた伊藤さん。
これまで15年以上にわたって、老犬介護や介助、リハビリ、ワンコをゼロポジション(=正しい姿勢)に導くゼロポジ整体の考案・施術など、さまざまな方法でワンコの健康をサポートしてきたそうです。
ワンコの健康に対する考え方に共感し、nowaチームへの参加を依頼したところ、「もっと多くのワンコ、飼い主さんに情報を届けたい」と、快諾してくれました。
今回は、伊藤さんのこれまでの活動とこれからの目標について、伺います。

Interview

#01きっかけ

伊藤さんがワンコに携わる仕事を始めたのは、どのようなきっかけからだったのですか?

20年以上前、私が子どもを妊娠している時にワンコを迎えたんです。黒いラブラドールレトリーバーを飼いたかったんですけど、旦那から「妊婦なのに大きいワンコを迎えたら大変」って言われたので、黒い柴犬を迎えました。

小太郎って名付けたんですけど、問題行動のデパートみたいな子で(苦笑)。小太郎がこたつに入っている時に人が足を突っ込むと、嚙んでくるような子で、近所のしつけ教室にずっと通っていました。

そのしつけ教室で、ワンコ関連の仕事に興味が?

いや、ワンコの仕事は専門学校に行かないと就けないと思っていたので、少しも考えていなかったんです。

そんな中で、小太郎の散歩中にゆっくりついてくる柴犬がいたんですよ。すごく太った子で、その子の後ろのほうに飼い主のおじいさんがいたんです。おじいさんと話してみると、「俺が散歩に行けないから近所しか歩けなくて、この子は太っちゃった」と言っていて、私が代わりに散歩に行けたら痩せるし、もっと軽やかに歩けるのになって思ったんです。

そのタイミングで、しつけ教室に置いてあった「ペットシッターって知ってますか?」というパンフレットが目に入ったのがきっかけです。

そのパンフレットを見て、ペットシッターになろうと。

はい。ペットシッターになるための通信講座を申し込んで、勉強して、認定証をもらって、ペットシッターとして開業しました。徐々に依頼してくださる飼い主さんが増えていって、もっとも依頼が多かったお盆の時期は、1日15~16件入ったこともありました。

15~16件はすごいですね!?当時は、まだワンコと出かけるのが難しかったですもんね。一方で、小太郎くんとの生活もありましたが、大変ではなかったですか?

しつけ教室に通ったこともあって、小太郎との距離感もわかり、暮しやすくなりましたね。小太郎がおじいちゃんになってから、今わが家にいるオーストラリアン・ラブラドゥードルの三四郎を迎えたんです。三四郎はパピーの頃からフレンドリーだったので、小太郎ともすぐに打ち解けましたね。

小太郎が亡くなってから、すぐに福来(ふく)を迎えたんですが、2022年夏に6歳で亡くなってしまったんです。三四郎はずっとワンコと暮らしてきたので、1頭だとかわいそうかなと思って、福丸を迎えました。今は2頭で仲良くしています。

#02老犬介護や整体のこと

ペットシッターの経験で、印象深いエピソードはありますか?

老犬介護を頼まれた時のことですね。「寝たきりになってしまった愛犬を見てほしい」という依頼で、最初は朝と夕方の2回お世話をしに行く形だったんですが、「私が留守の間ずっと見ててほしい」とお願いされるようになって、ワンコのデイサービスをつくりたいと思いました。

当時、老犬を介護するという考え方は、主流ではなかったですよね?

そうですね。ワンコが長生きできるようになってきた頃でしたが、シニアになると病院に預ける家庭が多かったですね。でも、老犬介護の需要があると知って、今後必要なものになるだろうなと感じました。

そこから介護やリハビリのスキルやノウハウを蓄積していったのですね。

整体を始めたのも同じ頃です。もともと私が整体オタクで、ここの筋肉を刺激するとこの部分がほぐれるんだって、考えながら施術を受けるのが好きだったんですよ。素人ながら整体の知識があったので、ワンコにもやってあげたらいい効果があるんじゃないかというか、良くならないわけがないなって。

実際、施術をすると良くなる子ばかりだったんですよ。40kg近いラブラドールレトリーバーの飼い主さんから「夜泣きがすごい」って連絡をもらって行ったら、筋肉が弱って、顔が上げられなくなっていたんです。その苦痛で夜泣きするのだろうと感じたので、施術をして、顔を上げる運動をしました。

3回目の施術の時には顔を上げられるようになって、ごはんも自分で食べられるようになったし、体位を変えられるようになったんです。飼い主さんからは、「夜泣きがすごい」って連絡が来なくなりました。

整体を受けることで問題行動も抑えられるとは、驚きです。ところで、ワンコの整体はどのように学んでいったのですか?

私は独学なんです。当時はワンコの整体を教えている人がいなかったので、私が受けていた施術をワンコにも応用していきました。二足歩行と四足歩行の違いはありますが、同じ体なので、そこまでの苦労はなかったですね。

病気や治療に関する知識はなかったので、体調の悪いワンコが動物病院を受診する時についていって、一緒に獣医師さんの話を聞かせてもらったり、知り合いの獣医師さんに「こういう状態の子がいたらどうするの?」って聞いて、治療法を教えてもらったり。

それだけ努力してきたということなんですね。

努力というより、ワンコの健康や治療への興味が強かったんですよね。

#03大切にしていること

たくさんのワンコを施術されてきたと思いますが、その子によって体の状態は違うので、対応も変わりますよね?

体の状態に加えて、飼い主さんの意向もあるので、千差万別ですね。施術の目的や捻出できる費用などによって、提案するケア法や紹介する病院も変わります。ワンコと飼い主さんの生活に合わせて進めていくことが、大切です。

そのためにも、飼い主さんの話を全部聞くようにしています。これまでの経緯をすべて話してくれる方もいれば、簡潔にまとめてくれる方もいますが、その話を全部聞いたうえで、気になるところを私から質問して、ケアの内容を固めていくイメージです。

話を聞いてもらえると、飼い主さんもの肩の荷が下りそうですね。施術を行うワンコとの接し方で、心がけていることはありますか?

友達になることです。施術を嫌がる子もいますが、健康のためにもしてあげたいので、「大丈夫だよ」と声をかけながら進めていきます。

あと、メリハリをつけることも意識しています。施術でじっとした後は、運動をしながら思いっきり遊ぶ。そうすることでワンコの中で遊んだ記憶が強くなるので、施術を忘れられるし、次に会った時も「遊んでくれる人」という印象が残っていて、構えないでいてくれるんです。

メリハリのある接し方は、飼い主さんも愛犬との生活で応用できそうですね。

できると思います。メリハリと同時に、ワンコを褒めることも大切です。飼い主さんには家でできる運動や簡単なマッサージもレクチャーするので、その中で「うまくできたら褒めてあげてください」と、伝えるようにしています。

飼い主さんの言葉がないと、ワンコもいいのか悪いのか、判断できないですもんね。ちなみに、どのような運動を教えているのですか?

難しいことではありません。散歩中に、公園に生えている木の根っこや舗装されていない道を歩くといったことです。歩く場所を工夫すると、ひざを曲げたり肩甲骨を動かしたりして歩き方が変化するので、脚の筋肉がついていきます。それを維持できると、シニアになっても自分で歩けるようになるんです。

かつてパテラと診断されたワンコがいたんですが、施術と運動を継続したら、獣医師さんから「ひざが外れにくくなった」と言われるようになったそうです。骨に異常があっても、筋肉でカバーできることもあるんです。

伊藤さんのお話を聞くと、愛犬の将来をポジティブに捉えられそうです。

#04これからのこと

今後やりたいことや目標はありますか?

ゼロポジションを広めて、姿勢を意識して歩くワンコを増やしたいです。きれいな姿勢で歩くと後ろ脚の筋肉が鍛えられるので、年齢を重ねても寝たきりにならず、立ち続ける犬達が多くなると思うんです。

介護が大変な理由って、ワンコが自立できなくなって、ごはんも寝返りも飼い主さんがサポートしないといけなくなるからなんですよね。愛犬が自立してくれれば、飼い主さんの負担は減るし、ワンコ自身のQOL(生活の質)も上がると思います。

ただ、人のように自主的に運動してくれるわけではないので、飼い主さんも意識してサポートしてあげてほしいですし、私もそのための知識を伝えていかなければいけないと思っています。私1人では限界があるので、知識やノウハウを広めて、ワンコの整体や介護のプロを増やしたいですね。

あと、リトリートの輪を広げていきたいです。

リトリートとは、何ですか?

日常から離れて、いつもと違った経験をすることです。私は愛犬と山に行くイベントを企画しているんですが、長めのリードでいつもより自由度を高くして山道を歩くと、ワンコがとてもいい表情をするんですよ。飼い主さんもリフレッシュできて、とても意味のある時間になっていると感じています。

ワンコは自然の中で思いっきり遊べるので、体も心も満足して、問題行動が減るといった効果もあるんですよ。理想はゼロポジションにしてからのリトリートですが、まず自然の中に行ってみるのもいいと思います。海が好きな方は、砂浜もおすすめです。

日常に運動やマッサージを取り入れ、たまにリトリートでリフレッシュして、健康で楽しいワンコとの日々を過ごしてほしいですね。

Profile

伊藤 みのりさん

Laugh with dog代表。2002年からペットシッターを始め、2007年にペットケアサービスLet’sの創設メンバーの1人として、老犬介護、ワンコのリハビリ、整体のサービスを行うとともに、プロの育成にも従事。「最期までワンコと飼い主さんが一緒に笑える時間を過ごせる手伝いがしたい」という思いから、2023年6月にLaugh with dog を立ち上げ、一人ひとりの飼い主さん、全国で飼い主さんのサポートを行うプロの方のサポートを行っている。

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