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いち飼い主から老犬介護の世界へ
ワンコの仕事に興味を持ってくれる人が増えてほしい

平端さんとnowa

nowaスタッフが日本最大級のペットイベント「インターペット」に伺った際に、nowaチームの三浦裕子さんから紹介していただいたのが平端弘美さんでした。
三浦さん曰く「信頼できる卒業生」の平端さんは、JAPANペットケアマネージャー協会老犬介護士養成講座のご出身。
現在は主に老犬介護に力を入れ、さまざまな家庭に訪問し、シニア犬のケアを行っているそうです。
初めてお会いした際に、「飼い主さん1人で抱え込まずに、介護について相談できる人がいることを伝えていきたい」と、話してくれました。
その熱意に胸を打たれ、「ぜひ『ワンコnowa』で届けたい」と伝えたところ、nowaチームに参加していただけることになったのです。
平端さんが介護の現場で得てきた知識とスキルを、一緒に届けていけたら。

Interview

#01きっかけ

平端さんがワンコに関する仕事を始めたのは、どのようなきっかけからだったのですか?

最初のきっかけは、娘が中学生の時に「クリーム色のポメラニアンが飼いたい」と言い出したことです。私としては初めて迎えたワンコだったので、しつけの知識もまったくなくて、何をどうしたらいいのやら(笑)。
オスのポメラニアンのライチを迎えてある程度経った頃、たまたま見たテレビ番組でセラピードッグの特集をしていて、興味が湧いたんですよね。セラピードッグを育成するような仕事に関われたらいいなって。しつけの勉強もしたかったので、セラピストの資格が取れるドッグトレーナーの学校に入学しました。

そこから、実際にトレーナーになったのですね。

そうですね。ライチは唸りやすい子だったので、セラピードッグに向かなかったこともあって、セラピストではなくトレーナーとして仕事をしてみようと思ったんです。ホームセンターのしつけ教室の講師をやったり、イベントを開催したり。
いざ活動を始めると、ある発見がありました。愛犬が若い頃に「散歩でひっぱられて大変」と話していた飼い主さんが、いつからか「あんなにひっぱってたのに、今では歩くのが遅くなっちゃって」と、ワンコの老化による不安や悩みを話すようになったんです。その時に、シニア犬の体のことに詳しいトレーナーってあんまりいないのかなって気付いたんです。
同じ頃に参加したイベントで、隣のブースにLet’sさんがいて、老犬介護の相談会をしていたんですよ。代表の三浦裕子さんが介護のお話を明るく楽しくされていて、すごく魅かれました。Let’sさんが開催している老犬介護士養成講座でシニア犬のケアについて学べると知って、すぐに受講。老犬介護についてアドバイスできるトレーナーになろうって決めましたね。

その講座でペットケアマネージャーという資格を取られたとのことですが、どのようなお仕事なのでしょうか?

人間のケアマネージャーと同じで、介護のお手伝いや飼い主さんのサポートをする仕事です。ケアプランという冊子を作ることもあります。獣医師さんは忙しいこともあり、病気やケガについての相談は受けられても、介護に関することまで時間を割くのは難しいんですよね。その点、ペットケアマネージャーは介護やリハビリを専門としているので、シニア犬と暮らす飼い主さんの悩みに寄り添える存在だと思います。
また、訪問介護も行っています。かつて、体重25キロぐらいの大型犬を介護している高齢の女性がいて、リハビリで通院するために車に乗せるのに30分かかっていたそうです。その方のお宅に私が伺ってリハビリするようになって、飼い主さんの負担も減ったのではないかと思います。
ペットケアマネージャーとしても、老犬介護士としても、さまざまな形でワンコと飼い主さんをサポートしたいですし、私たちのような存在を広く認知してもらうために、もっと活動していきたいと思っています。

#02飼い主さんに伝えたいこと

ドッグトレーナーとペットケアマネージャーは、仕事内容としては違うものですか?

子犬と接する機会の多いトレーナーとシニア犬と向き合うペットケアマネージャーは別物に見えるのですが、密接につながっています。
例えば、介護が必要になった場合に、オムツをはくことや診察で獣医師さんに触られることを嫌がってしまうと、ワンコも飼い主さんも互いに無理することになってしまいます。そうならないためにも、幼い頃からトレーニングをして、服を着せても、人に触られても嫌がらないように育てていくことは重要なんですよね。

なるほど、トレーニングと介護は関係しているんですね。どちらの知識も持っている平端さんが、ワンちゃんと接する時に大切にしていることはありますか?

もし、要介護状態になってしまったとしても、ワンコは最後まで自分の口で食べたい、自分の足で歩きたいと思っていると感じるんです。だから、自分でごはんを食べられる工夫をしたり、サポートしながら立たせてあげたり、ワンコの自尊心を大切にしたいと思っています。
例えば、サポートクッションや丸めた座布団を体の下に入れると、四つ足で立つ姿勢を維持しやすくなります。固形のごはんが食べづらいなら、流動食のような形状にして、シリンジやドレッシングボトルを使ってあげると、食べやすくなるんです。
ワンコと生活していると、どうしても「トイレができなくなった」「目が見えなくなった」と、できなくなったことを数えてしまうんですが、飼い主さんもできることに目を向けて、いっぱい褒めてあげてほしいんです。寝たきりになっても、ごはんをしっかり食べられるとか、足をバタバタ動かせるとかできることはいっぱいあります。

できることに目を向けると、希望も持てそうですね。ただ、介護となると、飼い主さんの気持ちも落ち込んでしまいそうです。

そうですよね。介護は大変だし、疲れるし、どうしても落ち込んでしまうもの。ペットケアマネージャーはワンコだけでなく、飼い主さんのサポートやケアを行う仕事でもあると感じています。
私がお宅に伺ってワンコのケアをしている間、介護について質問される方もいれば何気ない日常の話をされる方もいます。どんな内容であっても、わたしとの会話で飼い主さんの気持ちがラクになってくれたらいいなって。飼い主さんによって心地よさを感じる会話や対応は異なるので、瞬時に感じ取ることも重要なスキルだと思っています。

介護を1人で抱え込まないためにも、ペットケアマネージャーの存在は大きそうですね。

そう感じてほしいです。以前、マッサージを担当していたフリオくんという高齢のワンコがいたんですね。筋肉が衰えて歩けない子で、マッサージをしてもあまり効果が見えなかったんですが、毎週通ってくれていました。
フリオくんが亡くなった時、飼い主さんからいただいた手紙に、「マッサージ中、フリオは家では見せないような気持ちよさそうな顔をしていました」って書いてあったんです。飼い主さんしかわからない表情があることを教えてもらって、まだまだ勉強しなくちゃいけないなって。ワンコや飼い主さんとの触れ合いを通じて教えてもらうことは、たくさんあります。

1つ1つの瞬間が貴重な経験であり、ペットケアマネージャーの仕事につながっているんですね。

#03愛犬の思い出

現在の仕事のきっかけになったライチくんは、最近亡くなったそうですね。

2022年3月に、16歳8カ月で亡くなりました。最後1年間は寝ていることも多かったんですが、最後まで自分でごはんを食べて、トイレもして、亡くなった日も2回散歩をしたんですよ。もっと介護させてもらいたかったという思いもありますが、潔い生き方がライチらしかったのかなって。
介護の期間がなかったことで、かえって介護をされてる飼い主さんの気持ちを知れた気がします。愛犬がいつどうなるかわからない不安の中にいる飼い主さんの気持ちを、誰かがサポートしてあげないといけないと、より強く思ったんですよね。

体の調子が悪くなっていくと、どうしても不安ばかりが募ってしまいますよね。

そうなんです。ライチも一度大きな病気をしたことがありました。胆泥症といって、胆嚢にドロドロしたものが溜まって破裂してしまう病気なんですが、私は異変に気付けなかったんですよね。
手術をしていただいて、一命を取りとめたんですが、その時にライチとの向き合い方が変わりました。新しい命をもらったと思って、日々の食事や散歩の記録をつけるようになって。不安を感じたら、気をつけていかなきゃという方向に気持ちを向けられるといいのかなと思います。

そんな危機も乗り越えての16年間だったんですね。まだ亡くなって数カ月ですが、平端さんの気持ちは落ち着いていますか?

亡くなった時は泣きましたが、すぐに仕事があったことで気がまぎれたところもあって、ペットロスというほどではありません。
過去の写真や動画を整理し始めると、「こういう時期があったな」とか「こんなビデオが残ってたんだ」って、思い出がよみがえってきますね。家族との会話も増えて、ライチがこういう時間を与えてくれたんだって感じています。

#04これからのこと

ペットケアマネージャーをしていて、幸せを感じる瞬間は?

シニア犬をケアする仕事なので、ケアした子が亡くなっていってしまうんですよね。その後に、飼い主さんから心のこもったお手紙やメールをいただくと、この仕事をやっててよかったって思います。
以前ケアしていたミニチュアダックスフンドの飼い主さん夫婦は、私が「この運動がいいですよ」「こういうところをマッサージしてあげて」と伝えたことを、必ず復習してくれたんです。その結果、もともと丸まっていた背中が、5カ月くらいでピンと伸びて、顔つきも明るくなったんですよ。
その子が19歳で亡くなった時に、飼い主さんが「亡くなる前日まで教えてもらった運動をしていました」って、運動中の動画付きのメールを送ってくださいました。私の仕事が人の役に立ってるんだって、実感できた瞬間でしたね。

プラスに作用していることがわかると、うれしいですよね。そして、平端さんに教えてもらったことを実践していけば、ワンコとの生活も長く楽しくなりそうです。

そうなってほしいですね。1つお伝えしておきたいのは、若いうちのトレーニングで介護は予防できるということ。例えば、散歩1つ取っても、平らなコンクリートの道だけではなく、芝生や玉砂利、木の根っこの上を歩かせることで筋力がつき、足腰が強くなります。こういった日々の積み重ねで、寝たきりを予防できるんです。
実際に介護することになった時にも、ワンコ用のオムツより人間の赤ちゃん用のオムツの方が優れていることや、人間用のグッズをワンコの介護用品に代替する方法といった情報を伝えていくことが、大切だと感じています。
実は、私がケアをしたワンコの飼い主さん数人が、「平端さんにやってもらったことを他のワンちゃんにしてあげたい」と、ペットケアマネージャーの講座を受けてくださったんです。もう講座を卒業して、活躍されている方もいらっしゃいます。

ワンコのお仕事でつながった「wa」が広がっているんですね。

こういう「wa」も大切ですよね。ペットケアマネージャーや介護士は、飼い主さんと同じ目線の存在だと思っています。私自身もいち飼い主だったところから、仕事を始めました。同じようにワンコのお仕事に興味をもって、やってみようと感じてもらえるように、これからもワンコや飼い主さんと真摯に向き合っていけたらと思っています。

Profile

平端 弘美 さん

Hello doggie代表。2013年にジャパンドッグアカデミーでドッグトレーナーの資格を取得し、出張トレーニングやイベントを実施。2019年にペットケアマネージャーの資格を取得し、現在は主に老犬の訪問介護、動物病院でのケア・リハビリ、シニア犬に関するセミナーを行っている。

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