STEP① 愛犬が“吠える”理由を考えよう!
それって本当に警戒吠え?
吠えるのには必ず理由があります
ワンコには感情があり、吠えるにはそれぞれ理由があり、無駄な吠えはありません。吠えは、歓喜の声や警告の叫び、獲物を追い詰めるなど、本能的に発せられるものから、人間に知らせるためのコミュニケーションツールなど、人との関わりの中で学んだものもあります。吠えの対策を検討するときに大切なことは、そのワンコがなぜ吠えているのか、その理由を考えてみることです。飼い主さんに向かって吠えている場合の多くは、注目されたい、抱っこしてほしい、遊んでほしい、助けてほしいなどの「要求吠え」だと思われます。これらは、吠えることによって自分の要求が叶えられた経験から、強く吠える学習的な吠えと言えるでしょう。対して、本能的なものには、「歓喜吠え」「警戒吠え」「守り吠え」「恐怖吠え」「攻撃吠え」などがあり、歓喜吠え以外は、不安や恐怖などの心理から吠える傾向にあります。今回は、この不安や恐怖などの心理からの吠えへの対策について紹介します。
STEP② 吠えの記録をつけよう!
何に向かって吠えているのか
シーンや頻度を記録して対策を!
やめさせたい吠えがある場合、その吠えがどんなシーンに発生して、何に対して吠えているのかをチェックすることが先決です。不審な物音や人の気配、他のワンコなどの存在がきっかけで吠え始めたとしても、飼い主さんに向かって吠えているのなら、「お知らせ吠え」や「要求吠え」の可能性が高く、警戒吠えとは対処方法が違ってきます。まずは下記の①~⑤の記録をつけて対策を考えましょう。動画で記録を撮るのもオススメです。
愛犬が吠えた時のを状況記録しよう!
① 何に対して(向かって)吠えているのか見極める
ワンコの視線や体の向きなどをヒントに「対象」を見つけましょう
② その吠え方は、どれなのか?
高音?低音?吠え続ける?単発?吠え方に変化はある?
③ 吠えることによって、どんな結果が得られるのか?
同じようなシーンで、吠えることが強くなっているのなら、吠えることでそのワンコにとって、何らかのいい結果を生んでいる可能性があります。
④ フードが食べられる状態なのか?
恐怖や興奮が強いと、ワンコはフードを口にできません。
耳や尻尾などのホディランゲージを見て恐怖吠え攻撃吠えなのかの確認を。
⑤ 指示に従える状態か?
指示で吠えをやめられるのか?飼い主の声が届く状態か?
やめさせたい吠えが出現した時に、吠えの種類を見極めて対策方法・トレーニングを検討します。まず対策を始める前に、問題の吠えが一日何回あるのかなど、頻度や長さなども記録して、おきましょう。
STEP③ 吠えの対策方法は要因に合わせて!
警戒吠えをとめるには安心させることがイチバン
吠えの対策は、その吠えの要因を知ることが解決のヒントになります。意外にも、ワンコの居場所となる環境を整えるだけでも、吠えがぐんと減ることも多いんですよ。
警戒吠え
吠えている対象が物音や気配だったり、確認してない未知のモノなどで、連続して3~4回吠えて間に休みを入れて、様子を伺い、また3~4回吠えるのなら警戒吠えだと思われます。警戒吠えは、不安や警戒のために吠え始めるので、今いる環境や対象物が安心できると思わせれば、吠えは予防できます。外の物音などに反応している場合は、ワンコの居場所を窓から離れたところに移したり、窓やカーテンを閉めることも有効です。安心できるハウス(クレート)にガムなどの時間がかかるおやつと共に入る方法や、おやつを使ったゲームをすることも対策になります。未知のモノに警戒吠えする場合は、匂いを嗅がせるなど、ワンコに確認させることでも、吠えは収まります。
テリトリーの守り吠え
知らない人や他のワンコに対して吠えているのなら、守り吠え、恐怖吠え、攻撃吠えの可能性があります。ワンコのボディランゲージを読む必要もありますが、自宅への訪問者や、遊んでいる公園、ドッグカフェなどで、後から入って来た人やワンコに対して、立て続けに何度も吠える場合は、侵入者を追い出そうとするテリトリーへの守り吠えが考えられます。その場合は、一旦その場所から、出ていき再度その場所に入ると、自分が侵入者側の立場になり、その場所が自分のテリトリーではなくなるため、守るために吠える必要がなくなります。
恐怖吠え
「ウーッ、ワンワンワン」など、唸り声に続く、中音の吠えは、怖くて吠えていることが考えられます。怖い対象が近づきすぎている可能性があり、追いつめられると攻撃に転じることもあるので注意が必要です。まずは、怖がっている対象から離れ、逃げられる距離をとってあげること。逃げられないとワンコは恐怖が倍増します。吠えなくてすむ距離まで離れたら、好きなおやつが食べられるか確認してください。もしも食べられないなら、かなり強い恐怖を感じているので、おやつを口にできる安全だと感じる場所までさらに離れてください。おやつが食べられる状態なら、その場で少し様子をみて、吠えなければ再度対象にゆっくりと近づいてみて、徐々に慣れさせるようにしましょう。また、恐怖吠えの時は、絶対に叱らないでくださいね。
攻撃吠え
恐怖吠えと異なり、前のめりになって対象を見据えて、ケンカ越しに相手を追い払おうとする吠え。唸り声の後のガウガウなどの強い声で歯をむいて吠える状態です。腹を立てた状態での吠えなので、安全のため対象から引き離すことが先決です。攻撃吠えは、その前に対象となる人や他のワンコなどをじっと見たり、威嚇となる唸りを出すことも多いので、その段階で対象から引き離し、その場を離れてください。ワンコが動かない場合は、対象を見せない工夫をして、フセなどの体勢をとらせて落ち着かせながら、対象に去ってもらいましょう。小型犬の場合、恐怖吠えに対しては、抱っこして飼い主さんがワンコを守ることも有効ですが、攻撃吠えの時に抱っこすると、飼い主さんが「もっと吠えろ!」と応援していると勘違いして、さらに強く吠える可能性があります。攻撃吠えの時は、抱っこではなく、リードを短く持って、離れるようにしてください。
STEP④ 警戒吠え対策に役立つトレーニング
事前のトレーニングがイザという時にも役立ちます
ワンコは吠えることで興奮度がアップします。ワンコの興奮は、ジェットコースターのようなもので、ゆっくりと上がっていく時は、飼い主の声も聞こえますし、やめさせることもできるでしょう。しかし、ジェットコースターが頂点まできて、スピードを上げて走り出してしまうと、しばらくはストップできません。そうなる前の対処が必要になります。それには、事前のトレーニングが有効です。吠えの対策につながるやっておきたいトレーニングをいくつか紹介するので日ごろからトライしてみましょう。
クレートトレーニング
ハウストレーニングとも呼ばれる、ワンコが自ら喜んでクレートに入り、そこで静かに過ごすトレーニングです。これをマスターできれば、吠えてほしくない時に、あらかじめクレートに入ってもらうと安心です。ただし、トレーニングせずに無理やりクレートに入れて閉じ込めた経験がある場合は、トレーニングに時間がかかるので、ご褒美を上手に与えて根気よくトライしてください。
おやつ探しゲーム
ノーズワークとなるワンコが嗅覚を使って、部屋の中にあるおやつを探すゲームです。最初は、部屋のあちこちにフードを投げて回収させるゲームから始めて、ルールがわかってきた、クッションの下、ソファの下、箱の中など、少し見つけにくいところにおやつを置いて、探すゲームをします。ゲームに集中していると、警戒心が弱まり、吠えの軽減につながります。
オビディエンストレーニング
従ったらワンコにとってうれしい結果を与える「提示型強化法」でアイコンタクトやオスワリ、フセなど、飼い主さんの指示にいつでもどこでも従えるようなトレーニングをしておきます。ワンコは、トレーニングで学習したことを行動する時、冷静な脳が働き、興奮を落ち着かせることができます。普段から、飼い主さんとトレーニングしていると、興奮しそうになった時も、そのコマンドで止めることができるようになります。
落ち着かせるトレーニング
リラックスした体勢で、ゆっくりとカラダをなでるなど、うちの子が落ち着く状態をみつけておき、日ごろから遊んだ後などに、落ち着かせるトレーニングとして取り入れましょう。「この体勢でこの部分をなでてあげるとリラックスする」とわかっていたら、興奮や恐怖を感じた後などに施すと、回復も早くなります。
STEP⑤ 対策後は必ず増減をチェック!
吠えが減らないのなら
対策方法が間違っているのかも
吠えの対策をした場合は、まずは一週間やってみて、対策前と比べて頻度や吠えている時間の増減を確認してください。吠えが全く減らないのなら、吠えを強化している要因が別にあり、その対策方法が合わないのかもしれません。今回は、警戒吠えをはじめとする本能的な吠えにへの対策を紹介しましたが、学習的な吠えの場合は対処方法が全く異なります。吠えた結果として、そのワンコにとってメリットとなること与えている場合は、吠えが軽減しません。まずは、ワンコが吠えた時の対処として、飼い主さんが何をしてきたかを書き出して、ワンコのメリットになることがないか確かめてみましょう。
Writer
山ノ上 ゆき子さん
風鈴犬のこころ研究室代表。行動分析学、学習心理学、動物心理学などを学び、ワンコと飼い主の心理や行動を研究。学会発表や、“犬のこころ”に着目した飼い主さんへの指導やアドバイス、執筆活動を行い、ヒトとワンコが共にハッピーに暮らせる社会づくりを目指す。元保護犬2頭と暮らし、アニマルセラピー活動も行う。JAHA CAPP活動チームリーダー。千葉県動物愛護推進員。