「犬は言葉が話せない」と言われますが、コミュニケーションがとれない訳ではありません。
「目は口ほどに物を言う」という諺もあるように、人間同士のコミュニケーションでも表情や動作から相手の心情を読み取っています。犬の気落ちを知る際に使えるのが、『ワンコの「生活の質」をチェックしてみよう!』でも一部ご紹介したカーミングシグナルです。今回は三井香奈先生によるカーミングシグナルの完全版になります!
大好きなワンコともっと仲良くなるためには、犬の気持ちを理解することが欠かせません、まずはワンコの行動の意味を知ることからはじめましょう!
犬のカーミングシグナル 01
嬉しいときの
犬のカーミングシグナル
耳を低くする
表情が豊かで、鼻に皺を寄せていない&歯を見せていない時は友好のサイン
Play Bow(プレイバウ)
犬同士で遊びに誘う時に使う姿勢ですが、人に対して使うこともあります
お腹を見せる
犬社会では服従を示しますが、人に対しては安心し切っている友好の印です
尾を振る
尻尾を高く上げて、左右にお尻ごとブンブン振っている時は喜んでいる
※ 尻尾は犬の体の中で、最も感情を表す場所です。よく観察してみましょう!
どんな時に見られるの?
飼い主さんと一緒に遊んでいる時、飼い主さんが留守番から帰ってきた時、ご飯やおやつをあげる前、おもちゃを手にした時など
どうすれば良いの?
サインに応えて褒めてあげる、一緒に遊んであげると、犬も自分の意思表示に応えてくれた♪と感じて、より仲良くなれます!
犬のカーミングシグナル 02
緊張しているときの
犬のカーミングシグナル
弧を描いて歩く
人や他の犬、物に対して、近づきたいけれど怖い気持ち。自分を落ち着かせている時にも見られます。
※ 人が初対面の犬に近づく時も、弧を描いて近づく方が受け入れて貰いやすいです。
体を搔く
ストレスを感じると出る動作。ストレスを下げる、落ち着かせるために行っている。(本当に痒い時もあります)
身震いをする
ストレスから逃れたい。不安や緊張を解消したいという動作。
舌なめずり
緊張状態にある。
匂いを嗅ぐ
匂いを嗅ぐことで、緊張を落ち着かせている(不安を感じている可能性も)
あくびをする
落ち着かない気持ちの表れ。緊張した気持ちを解そうとしている。
※ 人があくびを見せると「大丈夫だよ」というサインになり、犬の緊張が和らぎます。
どんな時に見られるの?
初めて行く場所や初めて会う人、初めて目にする物に対した時に見られます。慎重な性格の犬の場合は、よく出るサインです。
どうすれば良いの?
動作自体は悪いことではないので、止めさせる必要はありません。優しい声で「大丈夫だよ」と言ってあげる。嫌がらなければ撫でてあげることで落ち着く場合もあります。人に対して緊張している場合、美味しいおやつ、餌をあげてもらうのが効果的です。
犬のカーミングシグナル 03
怖がっているときの
犬のカーミングシグナル
視線を合わせない
敵意が無いことを表している
姿勢を低くする
攻撃しないでという気持ち。相手を怖いと感じて体を小さく見せている
尾を巻く
怖がっている
耳を低くする
「嬉しいとき」との違いは、目が上目遣いになっていることが多い
どんな時に見られるの?
初めて会う犬、初めて見るものに対して。飼い主が怒っている時にも見られます。
どうすれば良いの?
「緊張しているとき」と同じように、「大丈夫だよ」と優しい声をかけてあげる。撫でてあげることで落ち着く場合も。原因を取り除いてあげるのがベストです。
初対面の犬に対しては、犬の目を見ずに動かずじっとしていましょう。グーにした手を下からそっと差し出して、犬の方から匂いを嗅いで貰うと良いでしょう。
犬のカーミングシグナル 04
怒っているときの
犬のカーミングシグナル
うなる
相手に対する攻撃性を表している(犬同士が激しく遊んでいる時など興奮している時にも見られるが、これとは別のシグナル)
歯を見せる
相手に対する威嚇。鼻に皺が寄っている場合も。「これ以上近づくと噛むぞ!」というサイン。
耳を前方に傾ける
攻撃性や相手への威嚇。怒りが強いとより表情が強張る(犬同士の喧嘩でよく見られる)
尻尾を高めに振っている
怒っている時は尾の先を硬く動かしている。(嬉しい時の尻尾は横にブンブン大きく振る)
どんな時に見られるの?
餌を食べている時や、おもちゃで遊んでいる時に手を出される。犬同士の喧嘩。
どうすれば良いの?
そっとしておくのが良い。原因を取り除いてあげるのがベストです。
行動をよく観察することが大切
犬のカーミングシグナルには人と同じ行動でも意味が異なることもあります。
例えば、あくびは人間の場合は眠くなった、退屈などが原因になりますが、犬の場合は緊張していて、それを和らげようとしている行動です。意味が全く異なります。
あくびしている犬を前に、眠いならそっとしておいてあげよう、と部屋を暗くして出ていくと、ワンコにとっては大好きな飼い主さんに「無視された」と感じ、寂しい思いをしてしまいます。
ですから、私たちは犬のカーミングシグナルを知り、よく観察しなければなりません。サインに応じて行動してあげれば、ワンコはもっと飼い主さんのことを好きになるでしょう。ワンコが見せる仕草一つひとつに気をつけて、より仲良くなって欲しいと思います。
Advisor
三井
香奈
先生
ヤマザキ動物看護大学 動物看護学部 動物看護学科 講師
帝京科学大学大学院 理工学研究科 先端科学技術専攻 博士課程 修了。
専門は動物福祉学と応用動物行動学。
動物の生活の質(Quality of life)に着目し、研究している。