ブリーダー細田 信幸さんにきく、ブリーダーさんのお仕事【前編】

ワンコは私たちに出会う前、どんな風に生まれ育ってきたの?

大切な家族の一員であるワンコがどのように生まれ、育ってきたのか皆さんはご存知ですか?
知っているようで知らないワンコの繁殖について、犬のプロフェッショナルであるブリーダーさんに聞きました。前編では犬を繁殖させるために必要なこと、繁殖に適さない犬がいることなどを、ブリーダー歴28年でJKC千葉ブロック審査委員会副会長を務め、専門学校ちば愛犬動物フラワー学園で犬学や繁殖学を教えているホワイトスプレンダー代表の細田 信幸さんに教えていただきました。

ブリーダーになろうと思ったきっかけを教えてください。

私が27歳の頃、妻が「大きい犬が飼いたい」と言うのでペットショップへ行きました。そこでグレートピレネーズのオスと出会いました。超大型犬と暮らすためには知識が必要だと感じ、本を読むなどしつけの勉強を始めました。その犬は私たち夫婦には甘える性格だったのですが、生後11ヶ月になると、家族以外の人間に対して攻撃行動を見せるようになったんです。

何とかやめさせたいと犬の訓練士などプロに相談しましたが、その犬を見せると「家の中に閉じ込めておくか、安楽死するしかない」と言われてしまいました。当時、モデルの仕事をしていたので長期間、家を空けることになり留守番を母親に頼んだのですが、噛み付いてしまって・・・動物病院で安楽死をしました。

息を引き取る愛犬を抱き抱えながら「こういう性格の犬を繁殖させてはいけない!誰にでも可愛がってもらえる超大型犬を自分が作ってやる!」と一念発起したんです。

ブリーダーになるために必要なことはなんでしょうか?

当時は誰でも自由に犬を繁殖して販売することができたので、脱サラしてブリーダーになる人や、自宅で生まれた子犬を売って小遣い稼ぎをする一般の主婦も多かったですね。私はモデルをやめて、2年間ブリーダーさんのところで修行しました。そこでグレートピレネーズを繁殖させるために必要な基本を一通り学びました。現在、犬の繁殖を行うには自治体に第一種動物取扱業の登録が必要になっています。

もしブリーダーになりたいなら、好きな犬種に特化して、極めて欲しいと思います。私も10年間は、グレートピレニーズしか繁殖しませんでした。ブリーダーなら繁殖させる犬種については、しつけやカットなど何でも出来る必要があります。また子犬を譲る方には季節に合わせた運動量や食事量などのアドバイスができるように知識を身に付けることも大切ですね。

どんな犬が繁殖に向いていますか?

まずは健康な犬です。それに加えて、私の場合は性格重視ですね。犬の性格は遺伝も影響するので、一般家庭に向く人懐こい犬であることとも大切です。更に、それぞれの犬種にはスタンダード(理想的な被毛や体高、体型など)が決まっているので、それに近いことも大切です。そもそも犬を繁殖する本来の目的は、その犬種のスタンダードを守り、親犬よりも良い犬(理想系に近い犬)を後世に残すことなんです。

子犬も生後1ヶ月になれば繁殖に向く犬かどうか判断が付きます。一般家庭でペットとして暮らす上では問題がない場合でも、骨格がスタンダードと異なったり、性格に問題がある犬の遺伝子は残したくないので、ペットとしてお譲りする際には「この犬は繁殖に向かないので一代限り、家族として可愛がってあげてください」と伝えることもあります。

逆に繁殖に向かないのはどのような場合ですか?

下記のような場合、繁殖に向きません。

遺伝性疾患がある

潜在精巣、不合咬合、股関節形成不全、肘関節形成不全、膝蓋骨脱臼、網膜
萎縮など

性格的に問題がある犬

極端に臆病、攻撃的 母犬の性質が子犬に影響すると言われている

犬種のスタンダードから逸脱している

体が小さすぎる。ティーカッププードル、豆柴

近親交配になってしまう

劣性遺伝が強く出る

色素の薄い犬同士の交配

色素細胞は視覚神経、聴覚神経、心臓など内臓の形成において重要な役割を果たしている
例:ダップル同士のダックスフンドはNG

短頭種以外で帝王切開が2回続く

短頭種以外で帝王切開が2回続いてしまうようなら、その犬はお産に向かない体なので、私の犬舎では避妊手術をして繁殖には使いません。

繁殖に適した年齢や出産回数について教えてください。

メスが繁殖できるようになる、性成熟に達するのは生後7ヶ月(小型犬)〜12ヶ月(小型犬)です。その後一般的には6ヶ月毎(個体差があるので4〜8ヶ月毎)に発情しますので、その度に交配が可能になります。ただ初発情は心身ともに十分成長していないので、繁殖はさせません。血統書を発行しているJKC(ジャパンケネルクラブ)では、生後9ヶ月と1日以上の犬の交尾でないと血統書を出さないというルールもあります。

これまでの経験からメスは5〜6歳までが交配に適していると思います。また出産回数は、多い場合でも年に1回、生涯4回までですね。良い子犬を産ませるには母犬の健康・栄養状態が良いことが欠かせないんです。

繁殖をやめた犬は、愛玩犬として一緒に暮らしていますよ。今は10歳越えの犬ばかりいます。私たちブリーダーは繁殖で生活しているので、命を削って子犬を産んだ犬たちを手放すなんて出来ませんよ。

ブリーダーから見る数値規制

数値規制についての率直な感想は、誰がどうやって数えるんだろう?ということです。出産回数については、どのメスから産まれた子犬かは、日々世話をしている人間でないと分からないですよね。実際に平均3頭しか産まないメスもいれば6頭産むメスもいるので、少ない方のメスが産んだことにして、実際は多く産む方に出産させるなんてことは、台帳の上で誤魔化すことは出来てしまうんです。

帝王切開については獣医師が次の繁殖に使えるか決める事になっているようですが、本来ブリーダーがその犬のことを一番よく知っているんです。獣医師にとってブリーダーが「良いお客さん」なら、本当に適切な判断ができるのでしょうか?

現場の人間の声が反映されていないように感じるので、それは残念ですね。繁殖業と言っても、単犬種なのか、全犬種なのか、オークション用に繁殖しているのか、それぞれに違うので。一つの基準を当てはめることで逆効果になってしまったり、見えない部分で犬たちが酷使されるような事が無いようにしてもらいたいです。

「知ってる?ワンコの繁殖」後編では、細田さんに犬同士が交配し子犬が生まれ、飼い主さんに譲るまでの一連の流れを教えていただきます。

細田 信幸 さん

ホワイトスプレンダー 代表

動物専門学校にて動物映像の授業を受け持ち、講師として犬学・繁殖学などを教える。

専門学校 ちば愛犬動物フラワー学園講師

一般社団法人 日本アニマルピック委員会 理事

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