皆さんはワンコへの愛情をどのように伝えていますか?
美味しいフードをあげる、いつも一緒にお出かけする、カワイイ写真を撮ってSNSにアップするなど、飼い主さんの数だけ愛情表現があると思いますが、ワンコの「生活の質」を向上させてあげるのも、その一つの方法です。
今回はワンコの生活の質を動物の視点から科学的に研究しているヤマザキ動物看護大学講師の三井香奈先生にそのチェック方法と、ワンコの気持ちを知るためのカーミングシグナルについて教えていただきました。
CHECK
ワンコの生活の質を
犬の視点から
チェックしてみましょう!
みなさんのワンコはいくつ当てはまりますか?
環境に関するチェック
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01安全で清潔、静かなワンコだけの空間がありますか?
NGジメジメして空気が淀んだ場所、常に明るい場所、常に暗い場所、うるさくて一人きりになれない場所しかワンコに居場所がない、など。
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02ベッドから離れた場所にトイレがあり、いつでも自由に行くことができるようになっていますか?
NGベッドとトイレが近すぎる、クレートなどに閉じ込めている、など。
食事に関するチェック
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03ワンコがいつでも清潔な水を飲むことが出来ますか?
NG水を毎日取り変えていない、食事の時だけ水を与える、など
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04ワンコに合ったフードを選んでいますか?
NGライフステージ(子犬、高齢)や犬種に適切なフードではなく、値段やパッケージで選んでいる、など。
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05ワンコの適正体重を維持できていますか?
NGボディコンディションスコア「3」以外になっている(食事量カロリーで調整!)
犬のボディコンディション
スコア(BCS)と体型
BCS1痩せ
肋骨、 腰椎、骨盤が外から容易に見える。触っても脂肪が分からない。腰のくびれと腹部の吊り上がりが顕著。
BCS2やや痩せ
肋骨が容易に触る。上から見て腰のくびれは顕著で、腹部の吊り上がりも明瞭。
BCS3理想的
過剰な脂肪の沈着なしに、肋骨が触れる。上から見て肋骨の後ろに腰のくびれが見られる。横から見て腹部の吊り上がりが見られる。
BCS4やや肥満
脂肪の沈着はやや多いが、肋骨は触れる。上から見て腰のくびれは見られるが、顕著ではない。腹部の吊り上がりはやや見られる。
BCS5肥満
厚い脂肪におおわれて肋骨が容易に触れない。腰椎や尾根部にも脂肪が沈着。腰のくびれはないか、ほとんど見られない。腹部の吊り上がりは見られないか、むしろ垂れ下がっている。
ニーズに関するチェック
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06ワンコに必要な運動をさせていますか?
NG毎日散歩に行くなど「必要な刺激」を与えない、排泄を済ませたらすぐ家に帰っている、など
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07子犬の頃から様々な環境、人、動物に積極的に慣れさせていますか?
NG犬の社会化期(感受期):生後3週〜12週の間に様々な経験をさせていない、など
行動に関するチェック
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08人間や他の犬と触れ合わせていますか?
犬は社会性が高く(幸せ、不安、恐怖、怒りを感じる)集団で行動する動物です。飼い主さんを含めた家族や、他のワンコと触れ合わせてあげることが大切です。
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09小さな子供と犬だけにしていませんか?
双方にとって危険を排除するように心がけましょう。
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10ワンコだけで安全に遊べるおもちゃを与えていますか?
噛むことは犬にとって必要な行動です。噛んで遊べるおもちゃを準備しましょう。
病気に関するチェック
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11毎日、怪我や体調の変化(病気の兆候)に注意してあげていますか?
毎日、よく観察して、体の隅々まで触って確認してあげましょう。
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12動物病院で予防を徹底していますか?
狂犬病予防、混合ワクチン接種、犬フィラリア症予防、ノミダニ予防を定期的に行なっていますか?ワンコの健康のために予防が大切です。
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13マイクロチップを装着していますか?
迷子になったり怪我をしても、飼い主さんの元に戻って適切な治療を受けられるよう、万が一のことを考えて、マイクロチップを装着しておきましょう。
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14不妊・去勢手術を行なっていますか?
不妊・去勢手術は病気の予防にもなるので、推奨されています。
14項目のうち10個以上当てはまっていれば、アニマルウェルフェアの観点からワンコは幸せだと言えるでしょう。可能であれば満点を目指してみてくださいね!
もし10個以下の場合は、飼い主さんの負担が少ない項目から取り組みましょう!!
このチェックは、イギリスの「Animal Welfare Act(2006)」に合わせて、家庭犬向けに出されたガイドラインの中にあるチェックリストからピックアップしました。あくまで目安であり、全てに科学的根拠がある訳ではありませんが、ワンコの基本的な生活を整えてあげられているかの参考にしてみてください。
CALMING SIGNAL
ワンコの気持ちを
知るための
カーミングシグナル
ワンコがHAPPYな時
お腹を見せる
犬の社会では、順位が低い犬が高い犬に対して服従、譲歩する際にみられるポーズです。
人間に対しては友好のサイン、敵意がないことを示しています。
Play Bow
頭を低く下げて、お尻を高く上げるポーズ(Play Bow)は遊びを誘っています。犬同士はもちろん、人が好きな犬は人間に対しても同じ行動をとる場合があります。可能であれば、出来るだけ一緒に遊んであげましょう!
ワンコがUNHAPPYな時
- 耳を低くする
- 背を丸くして尾が丸まっている
- 体勢が低くなっている
- 震えている
このような行動をしている場合は、環境の変化や知らない人・物が身近にあるなどの理由で、怖がっている可能性が高いです。
One Point Advice
- ワンコを知らない環境に連れて行く場合は、ワンコの匂いの付いているもの(いつも使っているベッド、おもちゃ、タオルなど)を持っていくと良いでしょう。
- Unhappyなワンコがいたら弧を描くように近づいていき、手の匂いを嗅がせて安心させてあげましょう。嫌がらないようであれば、アゴの下から優しく触るとより安心させることが出来ます。
- Happyな時にも耳を低くする行動が見られます。他の表情と合わせてHappyなのか、Unhappyなのか判断しましょう。
もしワンコの行動でお悩みの方は、是非とも専門家に相談してください。
日本獣医動物行動研究会
三井先生からのメッセージ
私が研究しているアニマルウェルフェアの基本は、犬のニーズを満たす(犬が犬らしく生きる)ことになります。犬が本来持っている性質である「吠える」「噛む」などの行動は、人間社会で生きる上では十分に発揮させることは出来ません。その分飼い主さんには、犬の視点から犬のニーズを満たすこと考えて欲しいと思います。
Advisor
三井
香奈
先生
ヤマザキ動物看護大学 動物看護学部 動物看護学科 講師
帝京科学大学大学院 理工学研究科 先端科学技術専攻 博士課程 修了。
専門は動物福祉学と応用動物行動学。
動物の生活の質(Quality of life)に着目し、研究している。