繁殖引退犬の里親に|子犬以外の選択肢。引退犬を迎えるメリットと里親の幸せ

「引退犬」とハッピーに暮らそう。

皆さんは愛するワンコのお父さん、お母さんが現在どのように暮らしているかご存知でしょうか?
ブリーダーやペットショップから迎え入れたワンコの両親は「繁殖犬」として活躍した後
「繁殖引退犬」となります。中には引退してからもブリーダーの元で暮らす場合もありますが、
一般家庭へ譲渡される犬たちも増えてきました。
夜間救急病院で一般の家庭にいるワンコの診察を行う一方、ブリーダーにいる繁殖犬たちの健康面を
サポートし、繁殖引退犬の譲渡にも関わっておられる獣医師の小吹貴之先生にお話を伺いました。

Q

繁殖引退犬は、どんなワンコなの?

A

繁殖引退犬はブリーダーの元にいて、子犬を出産してきた犬たちのことです。歳をとった子、交配しても妊娠できない子、病気になり繁殖に向かない子など、様々な理由で仔犬を出産することから引退した犬たちを「繁殖引退犬」と呼びます。ブリーダーにいる犬たちの多くが純血種のメスなので、繁殖引退犬も純血種のメスが多いのが特徴です。動物愛護管理法の改正で飼養管理基準が定められ、繁殖から引退させる年齢が決まった事もあり、今後多くのブリーダーから引退する犬が増えると予想されています。

Q

繁殖引退犬は飼いやすいの?

A

子犬を家庭に迎え入れると、急に体調が変化するなど想定外のトラブルが少なくありません。一方で繁殖引退犬の場合、譲渡する前に獣医師が関わっていることが多く、健康状態も把握出来るので、その点では飼いやすいと言って良いのではないでしょうか。もちろん高齢過ぎる繁殖引退犬は何らかの疾患を抱えている場合もありますから、一定の医療ケアを続ける必要がある犬もいます。橋渡しに獣医師が関わっている場合は、ワクチンや不妊去勢手術が終わっている可能性が高いことも飼いやすい点と言えるでしょう。

Q

繁殖引退犬を選ぶメリットは?

A

一番のメリットは、成犬なのでその犬の性格や体の大きさがある程度決まっていることだと思います。犬たちは犬種が同じでも性格は様々ですよね。子犬だと育ってみないと持って生まれた気質は分かりません。繁殖引退犬のように最初からキャラクターが分かっていると、先住犬との相性や、家族のライフスタイルに合うかの判断材料になります。
あとは、現実的な問題として、迎える際の費用が安いこともメリットですね。子犬だと数十万円かかるけれど、繁殖引退犬の場合は数万円で済むことが一般的です。

Q

繁殖引退犬のデメリットも
あるのでは?

A

引退する犬の多くが6〜7歳なので、一緒に暮らすことが出来る時間が子犬に比べて短いことは事実です。それだけに毎日の時間を大切にして欲しいですね。
また、犬によっては人馴れしていない場合もあります。ちょうど今、シャイな繁殖引退犬を預かっていて人馴れさせる苦労もありますが、僕には少しずつ懐いてきました。シャイな面があることもその子のキャラクターの一部ですから、その子の全てを受け入れる気持ちで、時間をかけて向き合って貰えればと思います。(取材の後に開催された譲渡会で、先生が預かっていたシャイな繁殖引退犬にも新しい飼い主さんが決まりました!)

Q

トイレのしつけなどは
出来ているの?

A

それは犬によって様々です。僕がサポートしているブリーダーは20軒ほどあるのですが、中には繁殖犬が5頭しかおらず一般の家庭と変わらない生活をしている所もあれば、施設で数百頭の犬たちが暮らしている場合もあります。前者の場合はトイレのしつけが済んでいますが、後者だと最初から失敗せずにトイレが出来る可能性は低いでしょう。トイレのしつけや家庭でのルールを覚えることは、お家に迎えてから取り組んでもらう必要がありますが、それは子犬の場合も同じですよね。

Q

数百頭の犬がいる環境で
何度も出産するなんて・・・
可哀想に感じないの?

A

お付き合いのあるブリーダーは基本的に犬を大切にしていています。過酷な環境に放置しても平気という人は、そもそも獣医師に近づいて来ないのかもしれませんね。
遺伝性疾患を持たない健康な子犬を繁殖するためには母犬の健康管理も必須になってきます。そのことはブリーダーが一番よく分かっていますから、獣医師が適切に関わっているブリーダーであればきちんと犬の健康を考えていると言って良いでしょう。
一般のペットでも毛玉まみれで、汚れたまま放置されていたり、必要な量のフードを食べさせていない飼い主さんもいますから、どちらが可哀想とは一概には言えないですね。

Q

どんな飼い主に
繁殖引退犬が向いているの?

A

高齢者は先立つ可能性があるのでペットを飼うべきではないと考える方がいることも理解できますが、一方で犬と一緒に暮らすと毎日散歩に行ったり、お世話をしなければならないと考えるようになり、心身の健康を維持することに繋がると思います。
高齢者が元気に一緒に過ごせる時間を考慮すると、子犬よりも繁殖引退犬が向いていますよね。高齢者に繁殖引退犬を譲渡する場合は、定期的に往診してくれる獣医師を紹介するなど配慮すれば、社会との接点も確保できますし、良いことが多いのではないでしょうか。

Q

繁殖引退犬を家族に迎える際に
気をつけることは?

A

これは繁殖引退犬に限りませんが、多少の失敗も多めに見られる優しい人でいて下さいということでしょうか。すぐにトイレを覚えられなければ、おむつやマナーパットをつければ問題は起こりません。それに成犬でも新しい生活スタイルを覚えられない訳ではないので、気長に向き合うことも必要です。何でも完璧に出来なくても、そこに居てくれるだけで愛おしいと思うような人であれば、繁殖引退犬を迎える資格があると思います。

MESSAGE これから犬を家族に迎え入れる人にメッセージを

繁殖犬はブリーダーの元で適切に管理されていれば決して不幸ではありません。ただ引退しペットとして一般家庭で暮らすことが出来れば、犬にとっても新しい世界が開けますし引き取った飼い主さんを幸せにすることが出来ます。幸せの総量が増す気がするんですよね。獣医師としてその橋渡しに関わることが出来ればと、埼玉県熊谷市にある自分の事務所で月末の土日に譲渡会を始めました。これまでに7回開催して、20頭の繁殖引退犬が譲渡されていきました。家族として愛されるとみんな表情が見違えるほど生き生きしてきます。
その後、犬たちも飼い主さんも幸せそうに暮らしているので、獣医師として繁殖引退犬の譲渡に関わっていると、治療を行うよりも犬を幸せに出来たという実感を得られるのも正直なところです。
是非とも繁殖引退犬と暮らすことを、選択肢の一つとして考えてみていただければ幸いです。

SUPERVISOR

小吹 貴之 Obuki Takayuki

熊谷夜間救急動物病院 院長

大学卒業後に4年間、犬猫の一般診療に従事。それ以降は夜間救急獣医療を専門に日々奮闘。2019年6月には「熊谷夜間救急動物病院」の院長に就任。動物の健康を守りながら飼い主様に安心していただけるよう、日々活動中。

TOPICS ワンコnowaの姉妹サイトで 繁殖引退犬のご紹介を
スタートしました!

チワワブリーダーさんのストーリーと子犬のご紹介をしている「チワワnowa」では、
子犬だけでなくブリーダーさんのところの繁殖引退犬のご紹介をスタートしました!
今回、繁殖引退犬のご紹介の他、ブリーダーさんの想いや、実際に繁殖引退犬を迎えて幸せいっぱいのご家族の
ストーリーを取材させていただきました。一般の飼い主さんからは見えにくい、子犬のママのこと、
ママたちがどんなセカンドライフを過ごしているのかを、
みなさんにもわかりやすくお伝えできればと思います。
繁殖引退犬を家族に迎えて変わったこと、もらったもの、是非ご覧ください。

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