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今の自分がいるのは犬たちのおかげ その恩返しのために犬と飼い主さんをサポートしたい

里見さんとnowa

里見さんとnowaスタッフの出会いのきっかけは、“保護犬”でした。
「ワンコnowa」で保護犬の迎え方に関する記事を制作した際に、インタビューさせていただいたのです。
これまでたくさんの保護犬や保護団体さん、飼い主さんと関わってきた里見さん。
だからこそ、インタビューでお聞きした話には説得力がありました。
受け答えにも曖昧なところがなく、真面目で誠実な人柄も伝わってきたので、この人と一緒に保護犬やワンコとのコミュニケーションに関する情報を発信していきたいと感じました。
nowaチームにお誘いすると、「ワンコnowa」のあらゆる記事を読んでくださったうえで、参加を受けてくれたのです。
今回は、里見さんのこれまでの人生とドッグトレーナーとして大切にしていることを伺いました。

Interview

#01きっかけ

里見さんは、どのようなきっかけでドッグトレーナーを目指したのですか?

実は、もともとワンコが得意ではなかったんですよ。というのも、子どもの頃に公園で見つけた野良犬を木の枝でツンツンして、噛まれたことがあるんです。自分がイタズラして噛まれたのに、苦手になってしまって(苦笑)。

ちょっかいを出したとはいえ、怖いですよね。そこから、なぜワンコのお仕事に?

アレルギーの皮膚病が原因で人目を気にして、20歳を過ぎた頃から実家に引きこもるようになったんです。でも、外には出たくて、人が少ない夜に散歩をしてたんですが、たまたま立ち寄った公園に子犬が捨てられていたんです。今から20年以上前のことですね。

子犬には恐怖心を抱かなかったので少しだけなでて、そのまま帰ろうと思ったら、その子犬が家までついてきてしまって。両親に相談したら、動物を飼うことで引きこもりの僕が変わると考えたのか、うちで迎えることになったんです。

ワンコの散歩のために僕も外に出られるようになって、ワンコのことなら道行く人とも会話できるようになったんですよね。その子のおかげで引きこもりから脱出できたし、ワンコへの苦手意識も払しょくされました。

子犬を迎えたことが、ターニングポイントになったのですね。

そうですね。その後、皮膚病の療養で湯治を行うために、群馬の草津に滞在したんです。1年くらいして肌の調子が良くなってきた頃、温泉街で2匹のゴールデンレトリーバーを連れたおばあちゃんを見かけて。

2匹のゴールデンレトリーバーはおばあちゃんをチラチラ見ながら、おばあちゃんのペースで歩いてたんです。うちで迎えたワンコは散歩中に引っ張ったり、ブラッシングしたら噛んだりと、やんちゃな子だったので、どうしてこんなに違うんだと驚きました。

いろいろ調べてみると、ワンコがトレーニングできることや訓練士の専門学校があることを知ったんです。すぐに専門学校に連絡をして、見学に行くと、小柄な女性の訓練士さんが30kgはありそうなジャーマンシェパードドッグをきちっと歩かせていたんです。その姿を見て、こんなすごいことができるのかって驚いて、ここで学ぼうと思いました。

その姿を見たら憧れちゃいますね。そして、訓練士の専門学校に入学したと。

はい。警察犬の訓練士を育てる学校でした。当時の訓練は厳しくて、パートナーになるワンコの好みや性格に関係なく、指定したダンベルを投げて、持ってこさせるという訓練があったんです。ワンコに対して厳しすぎて、泣けてしまうこともありましたね。

でも、一度訓練を始めたからにはやり切らないと、ワンコが不安や恐怖を感じただけで終わってしまうので、毎朝自主練して、パートナーがダンベルを好きになるところまで持っていくことができました。今振り返ると、訓練の厳しさとその裏側にある愛情に触れられた貴重な経験だったなって感じます。

#02トレーニングのこと

専門学校を出た後は、すぐにドッグトレーナーとして働き始めたのですか?

はい、トレーニングの会社に入りました。そこでギャップを感じましたね。専門学校では警察犬になるために選ばれたワンコを訓練していましたが、世の中に出るといろんな犬種や性格の子がいて、飼い主さんの悩みもそれぞれ違って、ワンコとの向き合い方が全然違うなと。

その違いは、どのように乗り越えました?

知り合いがワンコの保護団体を紹介してくれたんです。人手が足りないということだったので、保護犬たちの散歩を手伝って、その合間にトレーニングさせてもらったんです。怖がりな子もいれば強気な子もいたので、試行錯誤しながら。

ワンコによってバックボーンもキャラクターも違うから、接し方を変えないといけないんだと学びましたね。寄り添って教えるのがいいのか、人が主導権を握ったほうがいいのか、その子の個性によって変わることを知りました。

さまざまな犬種や個性の保護犬に触れると、得るものも大きいでしょうね。

そうでしたね。そこから保護団体の代表に「専属スタッフになってくれないか」と声をかけていただいて、本格的に保護団体にコミットするようになりました。保健所(現在の動物愛護センター)に収容されたワンコを引き取って、自宅で2週間ほど基礎的なトレーニングをして、預かりボランティアさんや里親さんに引き渡すという活動をしました。

この経験から、家庭犬として生活するために必要なトレーニングを学べたし、人に対してワンコとの過ごし方のポイントを伝える難しさも知りました。ドッグトレーナーの仕事の土台の部分ですね。

現在の基礎ができたのですね。その保護団体では、どのくらいのワンコを見届けたのでしょう?

専属スタッフとして在籍した約2年半の間に、80匹以上のワンコを見届けました。

2年半で80匹以上!? それだけの経験と知識を積み重ねたということですね。

#03大切にしていること

今のお仕事のメインは、家庭犬のトレーニングですか?

はい。おうちに伺う出張トレーニングをしながら、ワンコを預かるデイケアサービスも行っています。そのかたわら、保護犬の預かりボランティアもしています。

日々いろいろなワンコとふれあっていると思いますが、接する時に大切にしていることは?

その子を知ることですね。犬種や家庭環境によっての特性はありますが、個体差の部分も大きいので、その子自身を知ることを心がけています。

初対面では、僕からはアプローチしません。急に距離を詰めて驚かせずに、ワンコがどんな迎え方をしてくれるか確認します。元気に迎えてくれる子もいれば、端っこでじっとしている子もいるし、時間が経つと慣れて匂いを嗅ぎにきてくれる子もいます。その子の様子を見ながら、踏み込める範囲を見極めるようにしています。

里見さんのアプローチ法だと、ワンコも安心してくれそうですね。初対面の子と会う時の参考になりそうです。飼い主さんとの接し方はいかがですか?

ドッグトレーナーをしていると、飼い主さんのニーズに応えることを優先しがちなのですが、ワンコの目線に立った時に本当にその子のためになっているかを考えて、できるだけ飼い主さんにも伝えるようにしています。例えば、「短期間で悩んでいる行動を直してほしい」と言われた時に、ワンコに無理をさせてしまわないかといったことです。

僕自身、飼い主さんに「やり方を変えましょう」と伝えるのは苦手なんですが、だからこそ、ワンコの目線で考えているかという自問を欠かさないようにしています。飼い主さんにも、愛犬が幸せに暮らせる方法を一緒に考えてほしいですね。

ワンコも飼い主さんも一緒に学んでいけると理想ですよね。

そのためにドッグトレーナーがいて、ワンコと飼い主さん、ワンコと社会の潤滑油の役割を担っていると思っています。

吠える、噛む、逃げるといった行動にはワンコなりの理由があって、そこを知ることでイライラしにくくなる飼い主さんはたくさんいます。運動不足が吠えの原因だったら、しっかり遊ぶ時間を設けることで生活がラクになる。そういう知識を伝えていけたらと思います。

茨城のキドックスという団体で、保護犬と引きこもりの若者の交流から支援につなげる活動を手伝っているのですが、そこでは子供のトリマー体験なども実施されていて、体験を通してワンコを知ってもらうことができる。ワンコも人も楽しく暮らせる社会を目指すためにも、子供のころから正しい知識が伝わる場や機会が必要だと思います。

#04これからのこと

今、抱いている目標などはありますか?

目標とは違うかもしれませんが、ワンコに恩返しをしたいと思っています。

初めて飼った子犬や専門学校で訓練したジャーマンシェパードドッグ、ドッグトレーナーとしてふれあったワンコたちがいたから、今の自分があります。その子たちがいたから、保護団体の方々や飼い主さんたちと出会えたので、感謝しかありません。

僕が初めて自分の意志で飼い始めて、最期を見届けた柴犬の存在も大きいです。しっかりトレーニングして、最後の数週間は一緒に過ごして、やり切った感覚はあるんです。ただ、振り返ってみると、お客様から預かった子や保護犬を優先して、自分の愛犬を後回しにしていた部分もあったかなって。

愛犬はおりこうさんで無理はしていなかったと思うし、後悔もないんですが、ほんの少しの心残りがあって。それは、これから関わっていくワンコたちに返していくしかないのかなと思っています。

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たくさんのワンコとふれあうことが、恩返しになるかもしれませんね。

そのためにも、飼い主さんが体験を通して、ワンコの正しい情報を理解できる場をつくりたいですね。100%完璧な状態を目指すというよりも、飼い主さんが愛犬の特性を知って、困りごとを軽減できる向き合い方を実践し、ワンコとの生活に自信を持ってもらいたい。そうなることで、ワンコも飼い主さんも幸せになれるのかなって。

僕自身も知識を伝えていきたいですし、後進を育てたいという思いもあります。次世代のドッグトレーナーが育てば、ワンコと飼い主さんが楽しく暮らせる環境を残していけますよね。

あと、飼い主さん同士の輪もつなげていきたいです。似たような悩みを抱えた友達がいることで、気持ちがラクになったりワンコとの向き合い方を見つめ直したりできると思うんです。そのお手伝いもしていきたいですね。

Profile

里見 潤さん

ドッグトレーナー。警察犬訓練校を卒業後、出張トレーニング会社を経て、保護活動団体「Dog shelter」の専属スタッフとして保護犬のトレーニングなどを担当。2012年7月に独立し、出張トレーニングやデイケアサービスを行いながら、保護犬の預かりボランティアを続けている。

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