【保護犬を迎え入れる前に必要な準備】元保護団体スタッフ、ドッグトレーナーの里見さんに聞きました

【保護犬を迎え入れる前に必要な準備】元保護団体スタッフ、ドッグトレーナーの里見さんに聞きました

保護犬を家族に迎えることが決まったら

自分にマッチする保護団体さんが見つかり、良いご縁がつながって保護犬を家族に迎え入れることが決まったら、何から準備すれば良いのでしょうか?(自分に合う保護団体の見つけ方は、第1回 どの保護団体から、どんな犬を迎えればいいの?を参照ください)

今回は、保護犬を家族に迎えることが決まった後に必要な「環境作り」についてご紹介します。

まずはその子を危険な目に合わせないという観点から考えてみましょう。また、保護犬と暮らす際の心構えやポイントについて、自身も保護犬の一時預かりを続けているドッグトレーナーの里見潤さんから教えていただききましたので是非ご覧ください。

保護犬を迎える際に必要な準備保護犬を家族に迎える前に準備したい犬グッズ・アイテム

まず環境整備で一番大切なのは「脱走防止」です。玄関や窓には柵を設けるなどして脱走できないようにしましょう。

「初めての保護犬を家族に迎え入れることが決まりました。保護団体のスタッフさんからのアドバイスに従い一通りグッズを買い揃えましたが、他に何か準備した方が良いことはありますか?」

保護犬を迎える前に必ず行なっていただきたいことは環境整備です。その中でも最も重要なのが脱走防止になります。ご自宅の玄関や掃き出し窓には柵を設けるなどして、犬が表へ出られないようにしてください。

過去に犬と暮らした経験がある方からは「前の子は勝手に外へ出て行くことなんて無かった」「本当にそこまで必要ですか?」と聞かれるのですが、私が譲渡に関わる際は皆さんに実施いただいています。飼育放棄だけでなく、多頭飼育崩壊、ブリーダー放棄、捕獲された元野犬など、保護犬のバックボーンはさまざまであり、家庭生活を経験していない犬も多いのです。

新しい飼い主さんにも慣れていない、新しい場所で初めての刺激に囲まれて暮らす犬にとって、最もリスクが高いのが脱走です。人慣れやトレーニングは必要ですが、それには時間も手間もかかります。まずは物理的に脱走を防ぎましょう。

実は私自身も預かっていた保護犬を脱走させてしまった経験があります。保護団体のスタッフをしていた当時は、10日~14日に1頭のペースで新しい保護犬を自宅で預かり、性格、行動、その保護犬に合っている管理方法を把握し、初期トレーニングした上で、預かりボランティアさんのお宅へ送り出していました。

脱走するような気配も無いし、そろそろボランティアさんの所でも暮らせると油断していたのでしょう、ある保護犬をリビングで自由にさせたままお手洗いへ。戻ってきたらその犬が消えていました。

通気のためにと腰高の窓を開け網戸にしていたのですが、なんとそこをブチ抜いて表に出てしまったのです(網戸にはストッパーをかけ、引いても開かないようにはしてあったのですが)

すぐに探しに出たところ、家の近くにあった公園で犬を発見。私を見ても逃げる様子もなく、散歩を1人で楽しんでいるようでした。この時は大事には至りませんでしたが、交通事故に遭ったり、人に怪我をさせてしまう危険性もあります。それに人慣れしていない犬ほど人目につかない場所を選んで逃げますから見つけるのはそう簡単ではありません。

保護団体のスタッフ、ボランティアさん総出での捜索活動が連日連夜続くことも少なくなく、残念ながら見つからない犬がいることも現実です。

ヒヤッとする経験をして初めて、脱走防止の重要性に気付いたというお声もよく伺います。

正直、私もそうでした。でもそれでは遅い。そうなる前に、自宅へ保護犬を迎える際は、脱走防止だけは必ず行なってください。

保護犬を迎える際に必要な準備愛犬をリスクから守るために重要な環境整備

サークル・クレートの他、片付けやキッチンへの柵の設置など愛犬を誤飲誤食から守るための準備も大切です。

他にも自宅での事故を防止する観点から、誤飲誤食させないように小物やお薬などを外に出しっぱなしにはせず収納するなど部屋の片付けも重要です。食に貪欲な犬を迎える場合は、キッチンにも柵を設けましょう。人が食べるはずだったステーキを食べてしまったという笑い話で済めば良いですが、火や刃物、犬が食べると健康を害するような食材などの危険がキッチンにはたくさんあることを忘れずに。

あとはトレーニングの要素も含まれますが、サークルやクレートは必須です。「犬を狭いところに閉じ込めるなんて可哀想」と思われる方も多いようですが、常に見守っていることは現実的にできません。私のようにお手洗いに行った数分間で事故が起こる場合もあります。目を離す時にはサークルやクレートの中に入れて犬の安全を確保しましょう。

保護犬を迎える際の心構え保護犬を家族に迎える際に大切な心の準備

大切なことは目の前にいる犬を「かわいそう」というフィルターで見ないこと。他の犬と比べたりせず、愛犬だけに目を向けること

「念願だった保護犬を迎えることになりました。これまで辛い思いを沢山した可哀想な子なので、私が幸せにしてあげたいと思っています。」

犬に対する思いやりや優しい気持ちが溢れる、とても愛情深い飼い主さんはとても多いです。

ただ、大切なことは目の前にいる犬を「かわいそう」というフィルターで見ないことです。ペットショップで子犬を見て「かわいい」と一目惚れして衝動買いする飼い主に、犬が迷惑ですと言うテレビコマーシャルもありましたが、犬と接する際にはその場の瞬間的な感情に流されないことが求められます。

かわいそうな子だからという気持ちで全てが上手くいくとは限りません。例えば、ブリーダー崩壊などでレスキューされた犬に多いのですが、リードをつけて散歩することに慣れていない、外に出ることすら怖いという犬もいます。怖がっているのだから外に出すのはかわいそうと散歩に行くのを止めてしまっては、いつまで経っても改善されません。
飼い主さんが抱っこをして散歩することからでもいいです。外は怖くないと教えてあげましょう。(トレーニングについて詳しくは、次回お話しします)

では、どのように犬と接することが求められるのでしょうか。正解はありませんが、その一つは、他犬と比べず、目の前にいるその犬を観ることだと思います。
家に来てもう何日も経つのに手からオヤツを食べてくれない、お隣さんの家にいる元保護犬は人懐っこいのにと比べてしまう、そんな風に犬に何かを求めてしまうのは止めましょう。あと「〜であるべき」という考え方ではなく、細かいことは気にしない!というくらいの大らかな気持ちで接していると、犬もこの人は安心できると感じるのではないでしょうか。

最後に私は、保護犬は可哀想な犬ではないと考えています。殺処分されてしまう可能性もあったのに人の善意で保護されたのですから、その時点で十分に幸せな犬です。また、ここから先は飼い主さんとの幸せな生活が待っています。「かわいそうな子」と思われ続けることは犬にとっても決して喜ばしいことではないでしょう。

保護犬を迎える際の心構え家族は同じ気持ちで犬と向き合って

保護犬を迎えたご家庭から相談を受けてお話を伺うと、お母さんはものすごく積極的だったけれど、お父さんはそこまで考えずに「保護犬もいいよね」くらいの同意しかなかったというケースがあります。散歩とお世話全般をしてくれて、可愛がってくれるお母さんには懐いているけれど、お父さんのことは怖い…構おうとすると吠えてしまう。
そもそもお父さんも犬は好きで一緒に暮らした経験もあるけれど「ペットショップから来た犬はいい子だったけれど、保護犬は…」となってしまっている。

こうなってしまうと家族の間で犬に対する意識が変わってしまい、結果的に犬も安心出来ません。犬と向き合うのと同様に家族の間でもきちんと話し合い、迎え入れるのかどうかを決めた上で、新しい家族である犬には同じ気持ちで接してあげてください。

保護犬を家族に迎えられる方へ

色々と事前に考えていただきたいこと、備えていただきたいことをお話ししましたが、「保護団体から犬を迎えるのは大変」「保護犬は過去にトラウマを持っているから飼うのが難しい」というように、保護団体や保護犬を遠い存在だとは思わないでいただければ幸いです。

また保護犬と一括りにお話ししていますが、1頭1頭その犬によって人馴れ、社会化の度合いは異なります。案ずるより産むが易しという場合もあります。
その上で、備えあれば憂いなしです。犬を迎えるというご家族にとっての大きな変化を前に、家族で改めて向き合い、話し合っていただく機会だと捉えてください。

また家族だけでは話が前に進まない場合には、保護団体のスタッフや保護犬と接する機会が多いドッグトレーナーなどに相談していただくことで、家族の中では思い付かなかったアドバイスやヒントを貰える場合もあるでしょう。上手に保護犬と暮らしている先輩、専門家を活用いただければと思います。

Dog trainer

里見 潤さん

ドッグトレーナー(日本警察犬協会公認訓練士、ジャパンケネルクラブ公認訓練士)、認定NPO法人キドックス理事。

日本訓練士養成学校を卒業後、出張トレーニング会社に所属。その後、保護団体の専属スタッフとして動物愛護センターからの保護犬の引き出し、一般家庭へ送り出す前の馴化などを担当。2012年にドッグトレーナーとして独立。飼い主と犬の関係性を重視したしつけ指導を行う。自宅で保護犬の一時預かりボランティアも継続している。

里見 潤さん
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