【犬の往診ガイド】動物病院の獣医師さんが自宅に往診してくれる?犬の往診の仕組みお願いできること

【犬の往診ガイド】動物病院の獣医師さんが自宅に往診してくれる?犬の往診の仕組みお願いできること

動物病院が苦手なワンコや体を動かすのが難しいワンコを動物病院に連れていくのは、大変ですよね。実は、獣医師さんに自宅まで来てもらう「往診」という選択肢があります。

一般社団法人 往診獣医師協会の代表理事を務める獣医師・丸田香緒里先生に、まだあまり知られていない「犬の往診」について、聞いてきました。

丸田 香緒里 先生

往診獣医師協会代表理事、アニマルライフパートナー代表。日本大学獣医学科卒。動物病院勤務後、飼い主にもっと近い存在の獣医師になりたいと思い、“人も動物も幸せな生活が送れるためのサポート”をモットーにアニマルライフパートナーを設立。獣医中医師、ペット栄養管理士などの資格を生かし、シニアケアや飼い主の心のケアに力を入れた往診診療のほか、企業顧問、製品開発など、活動は多岐にわたる。著書に『犬のいる暮らし 一生パートナーでいるために知っておきたいこと』(池田書店)。

犬の往診・訪問看護往診してくれる獣医師さんがいることをご存知ですか?

犬の往診とは?

獣医師がワンコと飼い主さんの自宅に伺い、その場でワンコの診察や治療、健康管理などを行うものです。

病気や老化によって身体が不自由な子、外出が苦手な子がいるおうちだけでなく、家庭の事情で動物病院に行く時間が確保できない、多頭飼いで病院に連れていくのが困難といった理由で、往診を利用される飼い主さんもいます。

おうちでリハビリや緩和ケア・ターミナルケアをしたいといった要望にも、往診であれば応えやすいという特徴もあります。獣医師も家の中が見られることで、「ソファの上を歩かせるとリハビリになりますよ」といった具体的なアドバイスがしやすくなります。

緩和ケア・ターミナルケアに関しても、定期的に獣医師に相談しながら進めることで、飼い主さんも心の準備ができるようです。往診を利用されている方の多くは、愛犬との別れに悲しみを感じつつも、ペットロスで立ち直れないという状態にまではなりにくい印象があります。

往診だからこそできること

獣医師が自宅に伺うことで、ワンコが落ち着いて診療を受けられるという特徴もあります。

病院だと緊張してしまう子や、人が好きで元気になりすぎてしまう子がいます。そういう子たちも、家族と一緒にいつも生活している場所にいれば、獣医師が来たとしても過度に興奮せず、普段通りの状態でいられるように感じます。

私が診たワンコの中には、シニア期に入って抱っこを嫌がるようになったり、認知症でクルクル回ってしまったりする子たちがいました。その子たちを病院に連れていくのは大変ですが、往診であれば、いつも昼寝している時間に伺い、寝ている間に診療することができます。

一般社団法人往診獣医師協会を作った理由

出典:一般社団法人往診獣医師協会

前身となる往診獣医師の有志グループが2020年10月に立ち上げられ、それから約1年7カ月後の2022年4月に、一般社団法人 往診獣医師協会を設立しました。

協会として正式に発足した最大の理由は、日本全国に往診を行う獣医師を増やし、どのような状況のワンコや飼い主さんにも、医療を提供する体制を整えるためです。

さらに、往診獣医師のネットワークを形成することで、獣医師同士が連携し、多くのワンコをケアしやすくなると考えています。例えば、私が体調不良などで動けなくなったとしても、同じエリアの獣医師が対応できれば、飼い主さんも安心ですよね。

協会に所属している獣医師を対象にしたセミナーを定期的に開催することで、獣医師のスキルや知識を向上させるとともに、ネットワークの形成にもつなげています。

一般社団法人往診獣医師協会が目指していること

日本全国に往診という選択肢を広めていくことで、ペットとの暮らし方が変わるのではないかと思っています。

例えば、高齢の方が「動物病院に連れていくのが困難」という理由でペットを迎えるのを躊躇されることがあります。もし、近所に往診獣医師がいたら、自宅でペットを診てもらい、健康管理ができるようになるので、迎えやすくなると思うのです。

また、獣医師同士だけでなくペットシッターさんやペットトレーナ―さんとのつながりも増やし、病気やケガの診療にとどまらず、病気の予防や早期発見・早期治療、健康維持まで含めたペット版の包括医療のようなことをしたいと考えています。

人の介護を行うホームヘルパーさんなどと連携することで、ペットも飼い主さんもケアする仕組み作りもしていけたら、より一層ペットと暮らしやすい社会になるのではないかと感じています。

私1人では限界があるので、協会という形にすることで広がりやすくなりますし、まずはその一歩として、往診獣医師の認知度を上げていくことを目標にしています。

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どうしたら往診で診てもらえるの?

往診に来てもらう際は、住んでいるエリアの往診獣医師を探し、電話やLINEなどで予約をするという流れが一般的です。近くに複数の往診獣医師がいたら、予約の際の対応などをもとに、相性が良さそうな獣医師を選んでもらって大丈夫です。

往診というと、大病をした時に頼るものというイメージが強いですが、軽度の症状でも問題ありません。「健康診断をお願いしたい」「予防接種をお願いしたい」「予防のために診てもらえると安心だから、定期的に耳掃除と爪切りをしてほしい」という依頼もあります。

往診獣医師も日頃のワンコの状態がわかっていると、万が一病気やケガをした際に診療しやすくなるので、一般の動物病院とは別にかかりつけの先生をもうひとつ見つける感覚で、相談してもらえたらと思います。

往診してくれる獣医師さんはどう探したらいいの?

往診を専門的に行っている獣医師を探すのは、現状ではまだ難しいといえます。インターネットで検索すると、一般の動物病院も出てきてしまうからです。そのため、往診獣医師協会のホームページでは、協会に所属している往診獣医師を都道府県別に検索できるページを設けています。

まだ往診獣医師がいないエリアもありますが、往診獣医師の認知度が上がることで、各地に増えていくと考えています。

どんな病気でも診てもらえるの?

一般的な往診獣医師であれば、基本的な身体検査(視診・触診・聴診など)、顕微鏡を使った検査(尿・便・皮膚など)、眼の検査、血圧測定、血液検査、超音波検査はできると考えて大丈夫です。

病気やケガの治療、薬の処方、注射、点滴、酸素吸収、ワクチン接種などにも対応できます。慢性疾患の緩和ケアやターミナルケア、マッサージ、リハビリ、鍼灸などを行ったり、食事管理や飼育環境などに関する相談に乗ったりする獣医師もいます。

ただし、往診では対応できないものもあります。例えば、誤飲や骨折などの疑いがある場合に必要なレントゲン検査は、自宅ではできません。症状が急激に悪化している場合や入院が必要な場合も、往診ではできることが限られます。このようなケースでは、一般の動物病院で診てもらう必要性が出てきます。

診療時間が決まっている一般の動物病院と異なり、往診では飼い主さんの予定に合う時間帯に訪問できるという特徴があるので、一般の動物病院と往診、それぞれにかかりつけの先生を見つけておくと安心です。

診察費はどのくらいかかるの?

診察費や薬代は一般の動物病院と変わりません。往診の場合は、そこに往診料がプラスされるのが一般的です。

私が運営している往診動物病院「アニマルライフパートナー」の往診料は、事務所から半径5km以内で2200円、半径10km以内で3850円(ともに税込)に設定しています。

往診前に必要な準備は?

飼い主さんにしていただく準備はなく、予約の時間に愛犬と一緒に待っていていただければ問題ありません。診療も、獣医師と飼い主さんが座り、ワンコが寝転がり、多少の荷物が広げられるスペースがあればできるので、広いリビングでなければいけないということもありません。玄関先で診療することもあります。

犬の往診の利用者さんの声犬の往診を利用する理由を教えて!

モモちゃんの飼い主さんに聞きました

咳や腫瘍を治療中のモモちゃん(16歳)/シーズー

シニア期に入ってから咳がひどかったんですが、モモは薬を受け付けない体質だったので、薬以外の治療法を探したところ、丸田先生が往診で鍼灸を行っていることを知りました。2022年6月からお願いして約1年、モモの咳は以前より落ち着いています。

手の施しようがないだろうと思っていた背中の良性腫瘍にもお灸をしてもらい、徐々に小さくなってきました。

自宅に来てもらえるので、高齢のモモに負担がかかりません。また、先生と1対1でお話できるので、日頃気になったことをすぐに質問できるのも、往診のいいところだと感じています。

ショコラちゃんの飼い主さんに聞きました

姿勢改善治療中のショコラちゃん(15歳)/トイプードル

ショコラは体調に問題はないのですが、徐々に背中が丸くなってきたのが気になっていました。病院に行くほどでもないと思っていたところ、娘が丸田先生を見つけて教えてくれたんです。

最初は相談のつもりで依頼したのですが、鍼灸やマッサージしてもらうことでショコラの姿勢が改善したので、定期的にお願いするようになりました。自宅でできるマッサージ方法なども教えてもらっています。

獣医師さんが家に来て様子を見てくれるのはありがたいですし、安心感があります。

タツジくんの飼い主さんに聞きました

下半身麻痺治療中のタツジくん(推定8歳)/バーニーズ・マウンテン・ドッグ

4月に保護されたばかりのタツジは、以前の飼い主さんのもとでは家の中でこもりっきりだったようで、下半身がマヒして歩けなかったんです。

もともと丸田先生には愛犬たちを診てもらっていたので、タツジも診てもらいました。「足が固まっているし、シニアだから筋力もつかないかも」という見立てだったんですが、鍼灸やマッサージの効果があり、徐々に立ち上がれるようになっているんです。

うちにはほかにもたくさんのワンコがいるのですが、具合が良くない時には注射や薬の処方など、西洋医学での診療もお願いしています。

大型犬は動物病院に連れていくだけでもひと苦労ですし、多頭飼いならなおさらなので、往診で自宅まで来てもらえるのは本当にありがたいですね。先生のおかげで、愛犬たちも元気に暮らしています。

丸田先生の往診と飼い主さんのマッサージで、2ヶ月で下半身がここまで動くように!!

往診専門獣医師のこと往診獣医師協会に所属している獣医師について

往診獣医師協会に所属している獣医師は、往診専門動物病院を開業している先生、または往診専門動物病院の開業を考えている先生です。

往診専門の獣医師は病院を持っていないので、移動車に機材や薬などを積んでいます。先生によっては、血液検査の機械を積んだり、キャンピングカーを診察室のように改造したりすることもあります。

協会に所属している獣医師でLINEグループを作っているのですが、そこで「このような症例はどう対処していますか?」と聞くと、皆さんが答えてくれるんです。難しい症例の体験談なども聞けるので、とても勉強になります。

往診獣医師は基本的に1人で動くことが多いので、孤独な職業です。だからこそ、サポートし合える獣医師のネットワークは重要。飼い主さんとコミュニケーションを取る仕事でもあるので、親しみやすい雰囲気の先生が多いと感じています。

実は女性獣医師が多い世界

往診獣医師は、女性が多いんです。というのも、診療時間が決まっている一般の動物病院とは異なり、往診はスケジュールを組みやすいから。

お子さんが学校に行っている間に往診に出る先生や、旦那さんが仕事から帰ってきてお子さんのお世話をバトンタッチしてから往診に出る先生もいます。

一般の動物病院だと拘束時間が長く、体力的にもハードなので、出産を機に仕事を離れてしまう女性獣医師は多いのですが、往診は働き方の選択肢のひとつになると考えています。

往診動物病院の開業を考えている先生へ

往診獣医師はまだまだ少ないので、現場が見えずに不安を感じる部分が大きいと思います。ただ、多くの往診獣医師は往診の見学を受け付けているので、まずは近くのエリアの先生に連絡してみてください。

病院を建てるほどの費用はかからず、家庭用の車さえあれば始められるのが往診獣医師です。ワンコや飼い主さんとも密なコミュニケーションを取れる仕事なので、興味がある先生はぜひ考えてみてほしいですね。

知っておいてほしいこと丸田先生から飼い主さんへのメッセージ

往診と聞くと、「愛犬が歩けなくなったらお願いするもの」というイメージが強く、ハードルの高いものと感じている飼い主さんは多いと思います。

ですが、往診獣医師は緩和ケアやターミナルケアだけを行う仕事ではありません。ワクチン接種や健康診断、日頃の何気ない悩みにも対応しているので、「ちょっと皮膚病が気になるな」というくらいでも気軽に連絡してください。

早めに往診獣医師とのつながりを作っておくことで、大病をしてしまった時やシニア期に入って体が動きにくくなった時に、依頼しやすくなるはずです。知っている先生であれば、自宅に迎え入れる際の不安感もなくなりますよね。

かかりつけの動物病院に通いながら、かかりつけの往診獣医師も作っておくと、どのような状況にも対応できると思います。近くのエリアの往診獣医師を見つけてみてください。

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