犬を取り巻く現状を知ろう4|動物愛護法改正で注目の「数値規制」とは

何が変わるの?数値規制は何のため?

今回は、以前ご紹介した「動物愛護管理法」の法改正の中でも、
SNS等でも話題となっていた「数値規制」についてを、
少しでもわかりやすくお伝えできればと思います。

What? 数値規制とは?

繁殖業者やペットショップなど、動物のプロである第一種動物取扱業者に対して、犬猫の飼養施設の構造、規模、従業員数、環境管理の状況や繁殖の回数などについて、飼育環境について数値を定めるように法改正がされました。

数値規制で、飼育環境などについて
明確な数値が定められることに。

Why? 数値規制の目的は?

01 数値規制の目的は、劣悪な繁殖業者やペットショップの抑制

残念なことに、犬を家族のように愛情を持って育てている優良ブリーダーさんがいる一方で、「動物福祉」を守らず、ひどい環境で犬を育てている一部の劣悪な繁殖業者やペットショップが存在します。
パピーミル(子犬工場)と呼ばれる繁殖業者では、子犬を産むためだけに生きていて、散歩にも連れて行ってもらえず、必要な医療ケアが受けられない犬たちもいます。

そんな犬たちを救いたいという多くの声が後押しとなり、前回の動物愛護管理法改正で具体的な数値を定め、規制を強化することになりました。
「数値規制」はパピーミルやペットショップを抑制する目的で導入されたのです。

02 そもそも、どうして数値規制ができたの?

これまでは「数値規制」がなく「抽象的」だったため、
明確な指摘、改善指導ができずにいました。

以前から繁殖業者やペットショップには「第1種動物取扱業者が遵守すべき動物の管理の方法等の細目」という規制があり、ケージについては「十分な広さ及び空間を有するものとすること」、動物の頭数は「飼養施設の構造及び規模並びに動物の飼養又は保管に当たる職員数に見合ったものとすること」などが書かれています。

しかし、「十分な広さ」とはどの程度なのか、「職員数に見合った」頭数とは何頭なのか、具体的な数値が決まっていないため、自治体の職員さんが明確に改善内容を指導できず、劣悪な業者の登録の取り消しや業務停止命令が出来ないと考える人たちは「数値規制」が必要であると声を上げ続けてきました。
令和2年の動物愛護管理法改正では政治家がその声を聞き入れ「数値規制」が法律に盛り込まれることになったのです。

What regulation? 数値規制の内容とは?

環境省では「数値規制」を検討するために「動物の適正な飼養管理方法等に関する検討会」を開き、下記を原則として取りまとめました。

適切な飼育管理方法の原則

  1. 1.悪質な事業者を排除するために、自治体がレッドカードを出しやすい明確な基準とする
  2. 2.自治体がチェックしやすい統一的な考え方で基準を設定
  3. 3.議員立法という原点と動物愛護の精神に則った基準とする

そして、小泉進次郎環境大臣が出席する中で令和2年8月12日に開催された検討会では次の「数値規制」案が発表されました。
「適正な飼養管理の基準の具体化について 飼養管理基準として定める事項(案)」から特に注目が集まっている3点をご紹介します。

01 飼育スペース(ケージ飼育の場合)

寝床や休息場所となるケージの大きさ

タテ体長の2倍×ヨコ体長の1.5倍×高さ体高の2倍

運動スペースの確保と運動時間

ケージサイズの床面積の6倍×高さ体高の2倍の運動スペースを確保し、1日3時間以上は運動スペースに出し、運動させることを義務付ける

02 従業員

1人につき繁殖犬15頭、販売犬20頭まで飼育可能

従業員1人あたりにつき、繁殖犬は15頭まで、販売犬は20頭まで飼育可能(親と同居している子犬は頭数に含めない)

従業員は1日8時間労働

従業員スタッフは1日8時間労働を標準とし、1頭当たりの平均作業時間を想定
(繁殖犬の場合は32分、販売犬等の場合は32分)

※ ペットショップなどで接客のみに従事している販売員等はこの従業員の数に含まない。

03 繁殖の回数

生涯出産回数は6回まで、メスの交配は6歳まで(満7歳未満)

ただし、満7歳時点で生涯出産回数が6回未満であることを証明できる場合は、交配は7歳までということ。
また、1歳未満であろうとなかろうと、年齢や出産回数にかかわらず、繁殖に適さない個体は交配を認めないとされています。
詳細や、他の事項についてご興味のある方は「適正な飼養管理の基準の具体化について」をご覧ください。(2020年8月31日時点)

Various opinions 数値規制に対する
様々な意見

悪徳事業者(パピーミル等)の取り締まりができずにいた現状から見れば、今回「数値規制」という明確な基準ができたことにより、自治体が悪徳事業者(パピーミル等)に対して、取り締まりやすくなったと言えます。
しかし、この数値規制についても、様々な意見が出ています。

優良なブリーダーさんにだけ負担が強いられるのでは?
悪徳事業者は、数値規制を守らないのでは?
この数値では
犬を守るのにまだまだ不十分では?
ペット先進国の数値規制に合わせた方が良いのでは?
この数値規制を守るために、
処分される犬猫も出てきてしまうのでは?

数値規制が決まれば全ての問題が解決し、ワンコが守られるというわけではありません。
先ほどご紹介した検討会の座長が、下記のような提言を行っています。

検討会座長の提言

  1. 1.基準の具体化(数値化)は重要な要素であるが、数値のみに頼ってはいけない。
  2. 2.数値基準は分かりやすい反面、それだけで判断できるものでもない。
    数値のみにとらわれると本質的な福祉が損なわれる危険性も考えておかねばならない。総合的な判断が必要とされる場面も多いことに留意すべきだ。
  3. 3.罰則を伴う遵守基準を設けることで、急激な経営方法の変革を迫られて事業者が破綻・廃業等により飼育放棄や不適正飼養に至る可能性を考慮し、国は適切な準備期間を設けるとともに、事業者や自治体は必要な予防策や対応策を講じなければならない。

いくら環境が整っていても、それだけでワンコを幸せにすることはできないこと。また、捨てられる犬が増えないように考えなければいけないということ。いずれも重要な指摘だと思います。
数値をもとに自治体の職員さんがどのようにチェックしていくのかという運用や、飼い主さんたちの意識改革など、「数値規制」自体よりも、そこからみんなでどう「ワンコの幸せ」と向き合っていくかがとても大切になってくると思います。

前項でご紹介した素案は今後、環境省の動物愛護部会で審議され、秋にはパブリックコメント(国の行政機関が政令や省令などの案をあらかじめ公表し、広く国民の皆様から意見や情報を募集する手続き)が行われます。そして2021年の6月1日に施行される予定となっています。
数値規制の素案に意見のある方は、この機会にパブリックコメントを通してご自身の意見を伝えてみてはいかがでしょうか?

What we can do わたしたちにできること

「子犬」を迎えるとき、
どこから迎えるか、
その「選択」がワンコを救う
ことに繋がります。

不幸なワンコを救うために、私たち一人一人に何ができるでしょう。
この数値規定の背景には「悪徳事業者」を減らそうという目的があります。
しかし、私たち飼い主がそのような事業者から犬を購入し続ける限り、それは叶いません。
ですから、「犬と暮らす」ことを決めた時にどこから迎え入れるのか、その私たちの「選択」で今の現状を少しずつ変えていくことができるかもしれません。

子犬をこれから迎えようと考えている方は、是非、保護犬や親犬や子犬の育った環境を見せてくれる優良ブリーダーさんから迎えという選択肢があることを知っていて欲しいと思います。
劣悪な業者から犬を迎えないようにすることが未来のワンコを守ること、犬を取り巻く現状をよくすることの一番の近道になるのかもしれません。

子犬を迎える際の選択肢

01第二の幸せライフを待っている
保護犬を迎える

保護施設や保護団体、保護犬サイトなどからお問い合わせができます。

02愛情を持ってワンコを育てる
優良ブリーダーさんから迎える

ブリーダーサイトやブリーダーさん個人のサイトなどからお問い合わせができます。

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