nowa days. 03

ワンコを迎えてすべてが変わりました。
いなかったら、なんとなく過ごしていたと思う。

video creator

小野裕人×ふがえちゃん×こげおくん

絵を描いている姿を動画に撮影し、絵を制作する過程を見せる動画作品がInstagramやYou Tubeなどで注目を集める動画クリエイターの小野裕人さん。地元・福岡にいる頃に始めたワンコの保護活動を、東京に拠点を移した今も続けています。保護犬とお散歩にいく動画を配信する保護活動をきっかけに、自身もふがえちゃんとこげおくんという2匹のワンコを迎えることになった小野さん。ワンコと暮らし始めてから、人生が劇的に変わったといいます。そんな小野さんのワンコたちとの暮らしや独特な創作活動について、お話を伺いました。

小野さんの動画作品

絵を描く過程自体が一つの作品となっています。

保健所の明るいイメージを伝えるため動画を撮影

保護活動を始めたきっかけを教えてください。

僕は絵を描いていて、仕事でワンちゃんの絵を依頼されることがよくあるんです。実際に会えるわけじゃないので、送ってもらった写真をもとに描いています。写真を見て、着ている服やハーネスとかも全部見せてもらうと大体その子がどんな子かわかります。ダブルリードしているからちょっとやんちゃな子なんだなとか。さらにその子のイメージを掴むために、性格とか年齢とか、生活スタイルとかも全部聞くようにしていて、その中で、「うちの子、保護犬です」というワンちゃんが結構いたんです。僕はその時保護犬を全然知らなかったので、じゃあ見に行ってみようと、地元・福岡の保健所に足を運んだのが最初でした。
保健所は怖いところというイメージがあったので、友達についてきてもらって行ってみたら、自然がいっぱいで明るくて。ボランティアさんがわいわいお茶をしたり、お散歩しながらしゃべったり。すごく和気あいあいとしていて、とてもいいところだなと。これは広めなきゃと思って、保護犬とお散歩にいく動画撮影を始めて、毎週友達と通うようになりました。

ふがえちゃんとこげおくんともその保健所で出会われたのでしょうか?

保健所に通ううちに、ほかの保護団体のサイトを見るのが趣味になりました。その中で「ふがふがレスキュークラブ」という団体のページに「ひよこ166号」というめちゃくちゃかわいい子がいたんです。こんなかわいい子は、一瞬で引き取り先が決まるだろうと思っていたけど、全然決まらない。半年くらい経って、おかしいなと思って問い合わせをしたら、病気がたくさんあって治療費も高額になるため、誰も引き取れない状況だと説明されました。半年間ずっと見ていたのもあって、じゃあ、僕しかいないな、と思って引き取りました。それが、ふがふがレスキュークラブからお迎えした「ふがえ」です。
こげおを迎えたのも同じ時期です。知り合いの人が保健所から引き取ったワンコに子供が生まれて。その子がミックスで、引き取り手がなかなか決まらないと聞いたので。5匹のいる赤ちゃんのうち、横向いちゃって真っ黒だった、特に写真写りが悪かった子をお迎えしました。他の子はすぐ決まるだろうと思ったので。こげおは、焦げみたいに真っ黒だったので「こげお」と名付けました。

ふがえちゃんやこげおくんはどんな子ですか?

ふがえはいろいろな経験をしてきたのもあって、悟っているのかおっとりしていますね。もともと繁殖犬で、あまり良い生活ができていなかったんです。こげおは生まれたときから甘やかしてきたので、バリバリ元気いっぱい。ドッグランでほかのワンちゃんと会うとケンカするので、誰もいない早朝に行っています。今はいろいろトレーニング中ですね。
以前は住居とアトリエを一緒にしていたんですが、機材がたくさんあるのと、絵を描く画材などはワンコの体には良くないものが多いので、今は別にしています。

倍になった生活費を稼ぐため、
本気で仕事に向かい合うように

ふがえちゃんはお迎えしたあとのケアや費用が大変だったのでは?

全盲と、鼻が利かないのと、背骨が曲がっているのと、気管虚脱。あと、自己免疫性介在性溶血性貧血。とにかくお薬がいっぱい出ます。今まで月20万円あれば十分生活できていたけど、ふがえの治療費でさらに月20万円かかるようになりました。今まで特にがんばりもせず、なんとなく絵を描いて、なんとなく遊んで生活していたのが、一気に生活費が2倍に。保護団体さんからそうなると言われていたんですけど、大丈夫だろうと甘い気持ちでしたね。とりあえず生活費を治療費に全部使っていたら自分の食べる分がなくなって。あ、じゃあ仕事せねば、と。そこでようやく本気を出しました。

生活が大きく変わったのですね。

今までは自分の都合のいい仕事ばかりやっていたのを一切選ばなくなって。そうしたらたくさん仕事をいただくようになって、今に繋がりました。もしワンちゃんを迎えていなかったら、そのままなんとなく過ごしていたと思います。たくさん趣味もあって友達もいっぱいいて、最高だなって。自分のことしか考えていなかった。けれど、ワンちゃんが来てくれたおかげでがんばれた。今は前よりももっと楽しくて幸せです。絵を描いた相手も幸せになってくれるし、自分も楽しい。

絵を描いている姿を映した
動画自体が作品

小野さんが絵を描く過程を作品にしようと思った理由を教えてください。

動画作品を作りたいというのが先にあって、どんな動画を撮ろうかと思った時に、絵が描けるからそれを撮ろうと。絵は高校生のときから描いていました。僕が通っていた高校が、授業を自分で好きに選べる単位制の学校だったんです。美術、美術、陶芸、体育みたいな感じで好きな授業ばかり取っていました。大学は美大に入って、絵の勉強をして。卒業後は全然関係ない会社に就職したものの、半年で辞めて、そこからはずっとフリーター。そのときにペンで企業ロゴを描く動画をSNSにアップしたらそれが跳ねました。そこから、企業の依頼もたくさんいただくようになったんですよ。
仕事が落ち着いた時に、たまたまワンちゃんの絵を描いて、それを飼い主さんにプレゼントしたことがあったんです。そうしたらその方がお金をくださって、喜んでもらえるし、仕事にもなるんだなと。その絵をSNSにアップしたら、ワンちゃんの絵の依頼が続くようになりましたね。

今後お仕事でチャレンジしてみたいことはありますか。

ほかに同じことをやっている人がいないのでなかなか伝わらないのですが、絵を描く動画自体が作品なんだっていうことを世の中に認知してもらいたいですね。これも芸術の一部だと。僕の個展では、絵を展示して、その下に全部説明文とQRコードをつけているんです。それをスマホで読み込むと、原画を前に、その絵の制作過程の動画を全部見られるようにしています。個展会場にもイヤホンを用意してお貸しして。ここをこうやって描いたのかと、真っ白から完成までが原画を見ながら楽しんでいただけるようになっています。それ以外にも、来た方が楽しめるような仕掛けをたくさんしていて、普通の展示会より自由に楽しめる形にしています。

あとは引き続き保護犬の活動は続けていきたいですね。本当に、ふがえとこげおを迎えてからすべてが変わりましたから。ワンコつながりでできた縁は絆が強くて、仕事面でもそういう方々からかなり助けられて今があると思います。

ワンコの存在が仕事の幅と人との出会い、人生の可能性を広げてくれたという小野さん。
二匹の存在が創作の活力になっているようです。

Profile

小野裕人

14歳からモデルとして活動を始め、「アジアコレクション」や「東京ガールズコレクション」などに出演。instagramに、ケンタッキーのカーネルおじさんのロゴを描いた動画が、フランスの同社広告で採用されたことをきっかけにインスタグラムアーティストとして注目を集めるようになる。以降、国内外さまざまな企業の動画を制作。精力的な創作活動の合間には、動物愛護活動にも力を入れている。

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